にわか博物学者、ふたたび2010年05月24日 21時18分19秒



おや、昨日と同じ本?と思うぐらい見た目の印象が似ていますが、別の本です。
こうした類似本がたくさん流通していること自体、この手の本が当時いかに人気を博したかを示すものでしょう。

■Oliver Goldsmith,
 A History of the Earth and Animated Nature (2 Vols.)
 Fullarton, Edinburgh, No Date (c. 1860).
 高さ25.5cm, 本文536 pp. + 541 pp, 手彩色図版72葉入り


この本は、荒俣氏も著書の中でくわしく取り上げています。

「オリバー・ゴールドスミス(1728-74)はアイルランド生まれの
牧師であり、初期英国小説の名作『ウェイクフィールドの牧師』
を著した人物として、日本でも広く知られている。しかしこの
作家は、借金苦にあえいだ晩年に、とてつもない著作を書き
あげた。それが『地球と生物の歴史』であり、博物学という新しい
科学を英国に普及させる金字塔となった。

 この当時、フランスは博物学者ビュフォン全盛の時代であって、
その大著『一般ならびに個別の博物誌』がヨーロッパ中の注目
を集めていた。英国の出版社も、いち早くビュフォンの著作を
訳出出版する意向を固めていたが、大冊の上に無数の図版を
付けなければならず、かなりのリスクも予想された。そこで一軒
の出版社が、地球の歴史から全動物界までを記述するビュフォン
と同じ題材の本を、もっと小規模でもっと安価に制作することを
思いつき、ある程度の名声があってしかも金銭に困っている
ゴールドスミスにその話を持っていった。彼はこれを引き受け、
ビュフォンの『博物誌』を下敷きとしながら、科学と神話と超常識
の入り混じった、きわめて魅惑的な書物をついに書き上げる。
そして皮肉にも、その本は彼の死去した年に出版され、約1世紀
後の19世紀末まで英国で最もポピュラーな博物誌と称されつづ
けた。」  (荒俣宏、『大博物学時代』 pp.178‐179)


この本は1774年の初版以来、多数の版が存在するらしく、荒俣氏は「Blackie 版」を推奨しています。手元にあるのは、上記の通りフラートン版というものですが、両者の異同はよくわかりません。何だか元は同じ会社のようでもあります(両者の連名で刊行された版が存在します)。


“装丁は、仔牛革クォーター装のマーブル紙仕立て。内見返しに紋章入りの蔵書票を貼り込んだ、ウェールズのさる郷紳のライブラリから出た一冊”…とか勿体ぶって書くと、何だかとても貴重な本に思えますが、例によってさにあらず。

この本は、昨日のリチャードソンの図譜のさらに半値なので(これまた供給量のせいでしょう)、小学生でもその気になれば買えないことはない値段。

…むむ、なんだか金銭の話題に終始し、話が俗に流れたようです。ともあれ、何百万円、何千万円という世界とは無縁でも、その気になれば、19世紀博物学の香気に直接触れることもできるわけです。

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