ジョバンニが見た世界…小さな望遠鏡(3)2013年01月13日 11時26分47秒

さて、ジョバンニが眺めたであろう望遠鏡の現物を見に行きます。

これまでの予備的考察から、それは真鍮製の古風なシルエットの望遠鏡で、丈も低い卓上式機材だろうと推測できます。
そう聞いて思い浮かべるのは、先日取り上げた下のような望遠鏡で、これはプラネタリウム番組「銀河鉄道の夜」に出てきたCG画像です。
 

この望遠鏡は屈折式として造形されていますが、昔の屈折望遠鏡はおしなべて長焦点でしたから、口径はともかく、鏡筒がこんなふうにコンパクトで愛らしい姿をとることは、現実にはないでしょう。本当なら、もうちょっとスラリと長い感じになるはずです。

思うに、このCGを手がけたKAGAYA(加賀谷)氏は、18世紀に流行ったグレゴリー式反射望遠鏡を元ネタにして、この絵を作られたのではないでしょうか。

(James Short作のグレゴリー式望遠鏡。グリニッジ海事博物館のサイトより。
http://www.rmg.co.uk/visit/exhibitions/telescopes-redisplay/gallery/?item=11104

グレゴリー式望遠鏡は、下の図のような光路を描くため、主鏡の焦点距離よりもぐっと短い鏡筒長で済みます。この形式は、スコットランドの光学家、James Short(1710-1768)の卓越した技能(そして商才)によって、18世紀いっぱいもてはやされ、当時は小口径望遠鏡といえばグレゴリー式というイメージがありました。

(ウィキペディアよりグレゴリー式望遠鏡の光路図。http://en.wikipedia.org/wiki/Gregorian_telescope

おなじみの屈折望遠鏡が、パーソナルユースの小望遠鏡市場で巻き返しを図ったのは、世紀をまたいで19世紀以降のことでしょう。

「銀河鉄道の夜=1912年」説に立てば、グレゴリー式望遠鏡はすでに遠い過去の存在であり、当時にあっても骨董品的扱いをされていたと思いますが、だからこそ古風な星座絵との取り合わせが生きてくるわけで、時計屋の主人はそこを敢えて狙ったのではないでしょうか。
(しかし、この時計屋が地方都市にありがちな、「時計・眼鏡・宝飾」を一手に商う店だとしたら、望遠鏡も現役の商品として陳列してあったのかもしれず、上の推測はあくまでも1つの可能性、仮説です。)

   ★

さて、時計屋の店先を再現するには、私の手元にも、その現物がなければなりません。しかし、アンティークのグレゴリー式望遠鏡は、言うまでもなく非常に高価です。いかに円が強含みでも、ざっと数十万円、状態が良ければ100万円以上はするでしょう。

しかし、ここであきらめてはならず、貧は貧なりに、いじましく頑張れば、自ずと道は開ける(こともある)ものです。

(この項いじましく続く)

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