鉱石倶楽部幻想(4)…cafeSAYAへ(後編)2013年08月17日 16時59分44秒

8月も残り2週間。
白い雲を見上げ、何となく寂しさが心の隅に宿る時期。

   ★
 
(帰宅後に撮影)

この日は『ルーチカ図鑑/鉱物』という、オリジナル小冊子の発刊を記念して、冊子で取り上げられている鉱物が、お店の一角に飾られていました。
 

背後にハサミとか、いろいろ細々した道具類が見えます。これはcafeSAYAでは頻繁に各種のワークショップが開かれ、実験・工作系の催しでにぎわっているためでしょう。

   ★

こういうふうに見てくると、cafeSAYAは理科的佳趣にあふれた、とても素晴らしいお店だと思われるでしょう。実際、そうに違いありません。しかし、同店にも「弱点」がないわけでもない。いや、本当は弱点でも何でもないのですが、私個人にとってはキビシく感じられた点です。

それは「男性には敷居が高い」ということです。特に中高年の男性には。
ですから、今回の訪問には少なからず勇気が要りました。

この日も、店主のSAYAさん以下、お店のスタッフも、お客さんも、その場にいたのは全員が女性でした。そこに何を勘違いしたのか、くたびれた男客が入ってきたのですから、相当な場違い感があった…と思います。(もちろんSAYAさんは、明るく迎えてくださいましたが。)
 

気弱く頼んだ天青石のソーダ(同店のドリンクは、みな鉱物名にちなんでいます)を前に、何となく所在なさを味わっているとき、相席の女性が優しく声をかけて下さったおかげで、ホッと救われたような気分でした。そして少しずつ言葉を交わしているうちに、その女性こそ、あの「時計草の庭通信」(http://zabiena.exblog.jp/)の主、zabienaさんご本人だと知った時の驚き!

zabienaさんにしても、そう頻繁にcafeSAYAを訪れているわけではないとのことですから、これは偶然にしても、相当な偶然です。そして、その不思議な偶然に、cafeSAYAというお店がいっそう謎めいて感じられたのでした。

  ★

不思議と云えば、SAYAさんには、不思議な鉱物を見せていただきました。
南極で最初に発見された、その名も「南極石」。ガラス光沢を持った針状結晶の形態をとり、硬度は2から3といいますから、石膏と方解石の中間ぐらいの硬さがあります。

(瓶入りの南極石)

しかし、南極石が「石」でいられるのは、寒冷な場所のみ。室温ではとろりと溶けて、透明な液体になってしまうという、なんともはかない鉱物です。

(光にかざしたところ。すでに融解が始まっています)

  ★

こうして、いっぷくの涼と、いっときの「鉱石倶楽部」ムードを味わって、お店を後にしたのですが、せっかくの機会に何も買わずに済ますわけには当然いきません。


外の炎暑を考えて、思わず買い求めたのはグリーンランド産の氷晶石
「溶ける石」である南極石とは反対に、こちらは18世紀末に発見された当時、「溶けない氷」と考えられたそうです。

(『天体議会』に話を戻して、この項もう一寸続く)

コメント

_ 五十嵐麻理 ― 2013年08月17日 21時07分56秒

玉青先生

zabienaさんとの出会い、本当に素敵な偶然ですね。
やはり同好の士の間にはセレンディピティがあるのでしょうか。

cafeSAYAさんは、いろんな方のブログ記事の写真を見ても
かなり上級者向けのお洒落空間に思われ
私のような非リア充にとっても敷居が高く感じます。
(お客さんもスタッフの方もきっと気さくな感じだとは思うのですが)

いつか訪れたいと思っているものの、カフェ慣れしていないので
挙動不審にならないかちょっと不安だったり……。

でも理科趣味、鉱物趣味のお店が女性ばかりというのは意外です。
この手のジャンルは男性の比率が高い気がしていました。
ハンズの地球研究室も男性の方が多いのになあ。

_ zabiena ― 2013年08月17日 22時29分56秒

その節はありがとうございました。
いやもう、実際にお会いできたのはこの上ない僥倖ではありますが、まるで狐に抓まれたような心持で、玉青さんがお帰りになった後にびっくりした、びっくりしたと何度も言っていたら、SAYAさんに「そんなに??」と言われてしまいました(笑)

基本的に「おばちゃん」なので、誰にでも図々しく話しかけ、図々しく居座ってしまいます。

気安く話しかけたりしてご迷惑でなかったか、こんなぼさぼさ頭でぎょっとされたのではないか、と後からいろいろと思いはしましたが、とっさの時にこそ人柄というのは正直に出てしまうもので、こんな慎みのないおばちゃんではありますが、どうぞこれからもよろしくお付き合いのほど、お願いいたします。

私も御多聞に漏れず長野まゆみのファンでありましたが、カフェSAYAは「鉱物アソビ」から知りました。フジイキョウコさんのご著書も女子的要素が強いので、それもあると思います。
また、ドールショーなどにも出展され、ドールカフェなども催していらっしゃるので、女性客が多いのはそういうところもあるのでしょうね。

ただ、店主のSAYAさんはどちらかというと、正統派文学青年の系譜ではないかと、個人的に睨んでおります(笑)

_ とこ ― 2013年08月18日 01時42分34秒

こんばんは。
cafe SAYAの記事を楽しみに待っていました!
実は私はもう1年以上訪ねていないので、羨望のまなざしとともに拝見しました。

そして偶然の出会いといえば・・・東大の博物館を思い出しました!

_ 蛍以下 ― 2013年08月18日 13時36分35秒

ホントに素敵なお店ですね。店内にはBGMなど流れていたのでしょうか。理科趣味というコンセプトに合う音楽ってどんなのかちょっと想像がつきません。

女性のお客さんが多いというのは私は意外ではないです。
でも、鉱物でなく天体趣味となると圧倒的に男性が多数派なんですよね。

あとこれは勝手な思い込みですが、こういうお店は若い男女のカップルで行くのが一番似合わない気がします。(カップルで行った方ごめんなさい。)でも家族連れは「有り」な気がします。

_ 玉青 ― 2013年08月18日 19時39分29秒

〇麻理さま

「お洒落空間」と聞くと、スッキリモダンな印象を受けますが、cafeSAYAさんには、その対極の部分もあって、まあ強いて言えば「不思議空間」でしょうか。百聞は一見にしかず、まずは折を見て足をお運びいただくのがいちばんかと。ぜひ。

理科趣味・鉱物趣味のお店に男性がいないというのは、確かに不思議ですね。
そもそもは長野まゆみ氏の功績かもしれませんが、zabienaさんが書かれているように、「鉱物アソビ」の出版以来、鉱物趣味にもとみに女子的要素の濃い分野が確立し、cafeSAYAさんは、ちょうどその本流に位置づけられているようです。
では、ここでいう女子的要素とは何か、女子的要素と男子的要素を分かつものはいったい何なのか…というのは、また記事の方でいろいろ論を展開できればと思っています。

(ときにこちらで何ですが、8月も後半に入り、麻理さんの計画の進行状況がそぞろ気になります。晴れてのお披露目を心待ちにしております。)

〇zabienaさま

いえいえ、こちらこそ大変ありがとうございました。
先日の記事を拝見するまで、てっきりHNは「ザビーナ」さんとお読みするのものと思い込んでいて、お名前も呼び違えてしまったりして、失礼しました。
日ごろから鈍で、女性の外見に目が向かないので、「ぼさぼさ頭」(笑)には全く気付きませんでしたが、優しいお人柄はただちに感じ取ることができました。何分、どうぞよろしくお願いいたします。

本文には書きませんでしたが、やはりドールの存在が男子禁制ムードを高めている部分はありますね。SAYAさんその人については、書かれたものを拝読すると、ご指摘の通りだと私も思います。

〇とこさま

>もう1年以上訪ねていない

え、そうなんですか。私は「ルーチカ図鑑」の発刊もあったし、ひょっとしたら、とこさんもいらっしゃるかな?と思って伺ったのですが、身辺ご多忙の様子ですね。
なかなかお目にかかる機会も少ないですが、そのうちにまた霊妙な偶然が作用したら嬉しいですね!それにしても、あのときは驚いた…

「ルーチカ図鑑」拝読しました。
純粋にモノクロのペン画で鉱物の表情を伝えるのは大変なことだと思いますが、よくぞまあ…と感服することしきりです。(絵心のある人だったら、19世紀の図譜のように手彩色する楽しみもあるかも。)

〇蛍以下さま

たしかBGMは流れてなかったような…
カップルとの相性はどうでしょう。もともと趣味性の濃いお店ですから、趣味を共有できている幸福なカップルはいいですが、そうでないと確かにちょっとキビシイかもしれませんねぇ。

天文趣味も、潜在的には女性がもっと多く参入されていいと思うのですが、基本的に夜間の活動は女性にとって制約が大きいですし、それと今の天文趣味は、実際には「天体望遠鏡趣味」や「天体写真趣味」にウェイトがあって、純粋に天体を愛でるよりも、メカニックな要素とか「難天体ハンティング」の魅力に憑かれて活動している人も多いんじゃないでしょうか。これらは女性よりも明らかに男性にアピールする要素ですね。

鉱物の場合がそうであったように、女性による、女性のための天体の楽しみ方の本が増えれば、状況は変わるかもしれません。

_ 蛍以下 ― 2013年08月18日 20時44分33秒

玉青様

>趣味を共有できている幸福なカップルはいいですが

おっしゃる通りです。「おしゃれなデートスポット」のひとつではなく、隠れ家みたいな場所であってほしいものです。
行ったこともないくせに偉そうに語ってしまいました(笑)。

_ zabiena ― 2013年08月18日 20時46分38秒

浮かれて何度も失礼します。
HNについては造語のようなものですから、どう読んでくださっても結構です、読みにくくてすみません^^;

BGMについてですが、あの日はトイミュージックなどが小さくかかっていたと思いますよ。

クリンペライかパスカル・アイエルブのアルバムかなあ、と思います。
フランス語の子供の歌声もしていた気がするので、イザベル・カイヤールやエレーヌボーイなども可能性あり、という気がします。

以前SAYAさんにこの曲は誰のなんという曲ですか?と聞いたことがありますが、かけっぱなしなのでどの曲が誰のかはわからないけど、今かけているのはフランスのトイミュージックの人のアルバムかな、とのことでした。

トイミュージックはあのお店の不思議な雰囲気にぴったりだなと感心したのを覚えています。

_ 蛍以下 ― 2013年08月18日 21時07分23秒

zabiena様

はじめまして。
BGMお教えいただきありがとうございます。音楽お詳しいんですね。
私はいずれも存じ上げませんので、いずれyoutubeにあたってみます(笑)
それはそうとzabiena様の作品の数々、以前から拝見して舌を巻いております。
今後とも宜しくおねがいいたします。

_ zabiena ― 2013年08月18日 22時21分45秒

蛍以下さん

何度も書き込んでいいものか迷いましたが勢いで。
音楽は全く詳しくないのですが、雅楽は仕事で演奏してました(琴と竜笛)。

お褒め頂きありがとうございます。こちらこそ、どうぞよろしくお付き合いのほど、お願いいたします。

http://kachoufugetsu-fun.myjournal.jp/archives/65675121.html

天文趣味も鉱物趣味も、このところ女子勢力が元気ですね。
科学館のショップに上記の本がありまして、女性が流れてくると経済効果が高まる、という話を思い出しましたが、焼畑にならないといいな、と思ったりします。
自分も女ではありますが、さすがに女子とは恥ずかしくて言えません…

_ 玉青 ― 2013年08月19日 21時12分49秒

○蛍以下さま & zabienaさま

いい加減なことを書いてすみません。
音楽、流れてたんですね…
たぶん、それも記憶に残らないぐらい緊張していたのでしょう。

ときに『ときめく星空図鑑』のご紹介をありがとうございました。
これは『ときめく鉱物図鑑』に続く「ときめく」シリーズの2冊目ということですが、何となく出るべくして出た本という感じですね。

今後、「天文女子」が、どういう形や方向性で発展して行くのか、注目して見守りたいと思います。(それがどういう形であれ、天文趣味の世界がいっそう豊かになることは間違いないでしょう。)

_ とこ ― 2013年08月20日 23時17分10秒

横から失礼いたします。
ご存知かとも思いますが『ときめく星空図鑑』は京都のラガード研究所とゆかりのある書籍です。
著者の方を招いた天文講座が、あの店舗でたびたび開催されています。
かなり興味をそそられる内容です。
もしまだご存知なければチェックしてみてくださいませ!

_ 玉青 ― 2013年08月22日 05時50分14秒

おお、とこさんもチェックされてましたか。
「星空教室」、まだ参加の機会はありませんが、毎回楽しそうだなと思いながら、指をくわえて眺めています。昨年の第1回のときには記事でも紹介させていただき、廣瀬さんご本人からコメントを頂戴したのが懐かしいです。その後、イベントとしてすっかり定着しましたね。ラガード研究所の淡嶋さんの実行力にも脱帽です。
http://mononoke.asablo.jp/blog/2012/07/11/6507754

_ とこ ― 2013年08月23日 00時23分13秒

すでに記事にされていたのですね。
記事チェックを怠っておりました…失礼いたしました!

ラガードさんはイベントやカフェにも注力されていて、
情報を耳にするたびに気になっていたのですがいかんせん京都は遠い…。
いつかイベントにあわせて訪れてみたいものです。
玉青先生にもお会いしたいと切望しつつ。
もうすこし先になって落ち着いてから、どこかでご一緒できたらと思います。

_ 玉青 ― 2013年08月23日 08時02分32秒

いえいえ、まあそれにしても、将来にいろいろ夢や希望を思い描けるのは素晴らしいことですよね。私の希望もこめて、ぜひ叶いますように!

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