天体議会の世界…Smoking Boys(1)2013年09月24日 20時14分20秒

「天体議会」の銅貨と水蓮、あるいは「クシー君シリーズ」に登場するクシー君とイオタ君のふたりが、「銀河鉄道の夜」のジョバンニとカンパネルラのふたりと大いに異なるのは、彼らがやたらにタバコをふかすところ。
この点において、彼らは「賢治の子」であるばかりでなく、「足穂の子」たる資格をも十分備えています。

(「まあ一服」とクシー君とイオタ君。鴨沢祐仁作「流れ星整備工場」より)

   ★

それにしても、タバコほど、ここ四半世紀で、その社会的意味合いを大きく変えた嗜好品も珍しいでしょう。ちょっと前まで喫煙は「大人の象徴」であり、成長過程における通過儀礼的意味合いすらありましたが、今やスモーカーは社会的不適合者と見られかねない勢いです。

私自身は昔も今もタバコをやらないので、そうむきになってタバコ擁護論を展開するつもりはありませんが、しかし、かつては確かに<喫煙文化>や<紫煙の美学>というものがあり、社会の側もそれを公認していた事実は、はっきり指摘しておかねばなりません。

(ロボットも一服。鴨沢祐仁作「1001 bit STORY」より)

「足穂の子」がシガレットを口にするのも、それが明らかに「カッコいい所作」と受け取られていたからで、こういう当たり前のことも、今のような状況が続くと次第に分からなくなっていくかもしれません。

(ちょっぴりへそ曲がりなことを言うと、社会的害悪という点では、アルコールの方がはるかに罪深いはずで、その怖さは脱法ドラッグの比ではないでしょう。そのことは酒毒で苦しみぬいたタルホ御大自らが証明しています。)

そんなわけで、昔のタバコのパッケージは、実力派デザイナーの腕の振るいどころであったとおぼしく、今の目で見ても「うわ、カッコいいな」と思うものが多くて、その方面のコレクターも大勢いるはずです(eBayではそれ単独でカテゴリーが作られています)。

   ★

以下に、天体議会のメンバーが好んで吸っていた(と私が想像する)銘柄を挙げておきます。


まずは「STAR FIELD」。これは言うまでもなく議会メンバー御用達のブランドで、議会招集の折には絶対に欠かせない品(のはず)。


箱の裏側中央に注目。ちょっと見にくいですが、「Star Field」の文字の下に、スターシガレットでおなじみの(http://mononoke.asablo.jp/blog/2011/01/15/5637492)イギリスのWills社の星マークが見えます。もちろんこの「STAR FIELD」も同社の製品です。


厚地のパッケージの他に、薄紙の包装紙も見つけたました。

(この項つづく)

コメント

_ toshi ― 2013年09月24日 22時13分03秒

ご無沙汰しています.酒とタバコとどちらが体に悪いか?という問いかけに反応してしまいました.
結論として喫煙は百害あって一利なし,戦後の喫煙ブームの結果として,これから10-20年単位で肺癌とCOPD(肺気腫など)で亡くなる方が大量に発生してしまいます.
 ところで当方のブログに展覧会案内を書きました.ご意見・ご鞭撻お願いできれば幸甚でございます....本当はこちらが書きたかったかも,失礼しました.

_ 玉青 ― 2013年09月24日 22時43分38秒

あ、これは!
実は最新の記事を拝見して、瞠目するとともに便乗記事を目論んでいるところでした。
今の記事が一段落したら、天文骨董の王道について、改めて書いてみようと思います。その折には、リンク等でお世話になると思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。

時に酒とタバコですが、タバコも医療費の増大によって間接的に社会に負担をかけること大なるものがあると思いますが、酒はとかく家族を泣かせたり、直接周囲を巻き込むのがよろしくないですね。断酒会の方の手記とかを読むと、生き地獄のような悲惨な経験談が多くて、私自身用心の上にも用心が必要だと思っています。

_ toshi ― 2013年09月24日 23時19分46秒

>酒はとかく家族を泣かせたり

 そうですねぇ,これは一本とられました.
 小生は蒐集で家族を泣かせているかもしれませんが....

 新記事,楽しみにしております.

_ zabiena ― 2013年09月25日 00時25分32秒

「耳猫冬市」に出かけた折、長野まゆみ氏の蔵書からの放出品の写真集を何冊か購入したのですが、その中の一冊、「Jose Miguel de Miguel fotografics」(スペインのものです)の表紙が、まさに「喫煙する少年たち」の写真でした。

http://revistaatticus.es/2010/11/28/exposicion-fotografica-de-jose-miguel-de-miguel

このサイトの二枚目の写真がそれです。
この、ホセ・ミゲル・デ・ミゲルの写真集のほかにも何点か少年がモデルになっている写真が多く載っているものがあったように思います(ドアノーやキャパ、フォコンなどもありました)が、この感じ、現在の少年にはないですし、いかにも長野まゆみ氏の好みではないかと思います。


さらに蛇足ですが私は就職して禁煙しましたが、神社に奉職する以前は喫煙者でした。

私は高校は美術部で大学では文芸専修したので、周りの影響もありカッコつけていたのですが、たかだか15年前の、既にタバコの害について学校で教育されていた当時ですらそういう風潮はありました。
美大受験のための予備校に行くと天井がタバコの煙で霞んでいた、なんて話も。

長野まゆみ氏は私より年上で女子美術大学出身ですから、なおさらそういう、センシティブでジャンキーなのがアーティストだ、という風潮には慣れていたのでは、とも思います。


私は下戸の元喫煙者なので、喫煙にはかなり点が甘いとは思うのですが、玉青さんの意見には同意です。

タバコを無理に吸わされてもむせる程度ですぐにどうこうなりませんが、飲酒を無理にさせられたら急性アルコール中毒で救急搬送になる人はいます。
セクハラや説教、暴力、不遜な態度など人の弱い部分が簡単に出てくるのも、中毒になると体だけでなく人格を破壊してしまうのも飲酒の特徴かと思います。酒乱はそこここにいても煙乱はありませんし。
勿論これは偏った見方ですし、宗教的に飲酒する場面の多い職場にいて、さらにお祭りなどで酔ってひどい行動をして事件を起こす人々を見てきたからこんな風に思うのでしょうけれど・・・。

つまるところ、喫煙は副煙流にて周囲を巻き添えにするから、吸わない人たちに酷く非難されるのでは、と個人的には思っています。

喫煙マナーの悪い人や妊婦や子供や病人の前で吸う人まで擁護する気は全くありませんが、ここまで喫煙者差別が徹底してくると・・・・本人も害があることなど百も承知で、高いたばこ税を払って吸っているのですから、きちんと喫煙マナーを守っているならそこまで差別することはない、と思います。

_ 蛍以下 ― 2013年09月25日 12時31分38秒

私も2年前まで喫煙者でした。ハイライトが好きでした。
ちなみにハイライトのパッケージデザインは和田誠さんです。足穂にも出てくるゴールデンバットは今も健在でコンビニにも置いてあったりします。
90年代の前半までは大学の廊下にも灰皿がありましたし、歩きタバコも当たり前でしたね。非喫煙者には、さぞ迷惑だったことでしょう。
今やひと箱400円以上しますから、一日ひと箱吸えば年間15万円の出費です。辞めて良かったと思います。
あとは酒量をいかに抑制するか・・・です(^_^;)

_ 玉青 ― 2013年09月25日 22時04分51秒

〇toshiさま

>蒐集で家族を泣かせている

館長さん、副館長さん以下、館員の皆さんが館を盛り立てている様子を拝見する限り、とてもそうは思えませんが、この点については、なかなか曰く言い難いものがおありになるのかもしれませんね。(我が家もスケールこそ違いますが、いずこも同じ秋の夕暮…の感慨なきにしもあらず・笑)

〇zabienaさま

お加減はもうよろしいのでしょうか。本復されたのであれば何よりです。
私はzabienaさんと反対に、一貫して上戸(たしなむ程度)のノンスモーカーなのですが、お酒に関しては自他いずれについても、眉をひそめる経験が多い(多かった)ですね。もちろんお酒にはプラスの要素もあるのですが、トータルすればマイナスが上回っているのではないかと思います。

長野氏の過ごされた学生時代の環境が、おそらく煙まみれだったのでは…というご指摘は、これまで念頭にありませんでしたが、確かにそうかもしれませんね。もともと煙への親和性がおありなのでしょう。他方、お酒の話題が作中には少ないようですが、氏は下戸なんでしょうかね。

〇蛍以下さま

禁煙成功は蛍以下さんにとっては吉だったわけですね。どうもおめでとうございます。
さて、酒量抑制に関してですが、最近私は口にしても美味しいと思えない時は、無理せずそこで盃を置くことにしています。自ずと酒量も減ってきましたが、別に克己心が身に付いたわけではなく、単なる老化現象なので、あまり自慢にもなりません。それでも、とりあえず身体にはいいことなのだろうと、ポジティブにとらえています。

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