BARIGO社のこと2015年05月25日 22時06分50秒



昨日の「気象編」に、本当はこのバリゴ社の気象計を載せようと思いました。


1台で気圧、気温、湿度を表示してくれる芸達者。


透明ドームの中にそれをコンパクトに収めた手際も見事ですし、その機械美の見せ方もうまいですね。

この品は買ってからもう20年以上になります。
私が理科室風書斎を志した当初から、ずっとそばにいてくれる、心優しき友。
当時は通販誌の定番で、今もステーショナリー・ショップの店頭や、オンラインで盛んに売られているので、むしろありふれた存在かもしれませんが、こうして見ると、やっぱり美しいなと思います。

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ただ、記事として取り上げるからには、もうちょっと詳しい紹介をしたいと思いました。しかし、ネット上を徘徊しても、BARIGO社の歴史は何となく霞がかかっているのを感じます。


いろいろ見て回ると、その創業年は戦後の1949年のようです。
ならば、そう老舗老舗というほど老舗でもないんじゃないか…と思いましたが、でも、1949年は現在の会社組織になった年で、同社にはさらに前史があり、1926年が真の創業年だそうです。

で、それらを総合すると、以下のような紹介文になります(Amazonの関連ページの記述を一部改変)。

「バリゴ社は1926年にドイツ・シュツットガルト郊外で創業されたドイツの気圧計メーカー。社名はBArometer(バロメーター)と創設者のRIchard GOesの名前にちなんで名付けられた。1949年にスイス国境に近いシュヴァルツヴァルト(黒い森)の中にある町ドイツ時計産業の中心地、フィリンゲン-シュヴェニンゲンに移り高品質な製品を世に送り続けている。」

今ある日本語による紹介文はみな大同小異ですが(コピペなのでしょう)、そのソースが今ひとつはっきりしません。

より確かな事実を求めて、バリゴ社の公式サイトで「About Us」のページを見ても、そこには自社の歴史が全く書かれていません。これは「老舗」を以て任じる会社として、はなはだ異例なことです。

■BARIGO社公式サイト http://www.barigo.de/index_en.html

そもそも、創設者とされるRichard Goes(リヒャルト・ゲーズと読むのか?)とは誰なのか? どんな経歴の持ち主であり、1949年の会社設立時にも存命だったのか? 検索してもよく分かりませんでした。

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それでもしつこく探したら、やや詳しい記述が以下にありました(ドイツの気象機器研究家がまとめたサイトのようです)。

BARIGO – Schwenningen:Freund alter Wetterinstrumente
 http://www.freunde-alter-wetterinstrumente.de/14bargal11.htm

それによると、バリゴ社の創設は(1926年ではなく)1925年だと書かれています。場所はエスリンゲンで、確かにシュツットガルトの郊外。そして、創設者のRichard Goes の名が、後に社名に取り入れられたのは、事実その通りのようです。

1949年の会社創設時のトップは、Mehne、Hayer、 Müllerの3人で、Goes氏は当時すでにいなかったように読めます。そして、バリゴ社が大いに発展したのは、輸出ブームで沸いた1950年代後半以降のことである…というようなことも書かれています。

この記述のソースは、1999年に同社が発行したパンフレットだそうで、日本語の情報も、その辺りが元になっているのだと思います。おそらく、これ以上詳しい情報は、今に至るまで公になっていないのでしょう。創業時はごくちっぽけな会社だったので、語るに足ることがないのか、あるいは語るに語れぬ暗い戦争の影がそこに差しているのか…。


気にはなります。
が、この製品はそうしたこととは無関係に、やっぱり美しいなと思います。