暗い日2015年09月26日 13時35分42秒

世間の動きとは別に、気ままにモノを買うことは続いています。
しかし、そんな日々の買い物にも、その時々の思いは自ずと反映するものです。


先日届いたガラス製のステレオビュー(19世紀イギリス製)。

普通のステレオ写真は紙焼きですが、これは幻燈スライド風の画面を左右に並べて、光にかざして眺めるようにできています。
なぜこういう手の込んだことをするかといえば(製造費も輸送費も、紙焼きよりずっと高くついたはずです)、同じ絵柄でも、反射光で見るのと透過光で見るのとでは、印象がかなり異なり、それによってリアリティが増したり、モノによっては幻想味が濃くなったりするからではないでしょうか。

―とはいえ、これも今では省みられることのない、過去の視覚玩具に過ぎません。


この朽ち寂びた風情が、今の気分にとてもしっくりきます。
今の私は、いささかデカダンスの気分に流されているのでしょう。

   ★


そこに写っているのは、これまた陰鬱な情景です。
黒い雲に太陽が呑み込まれる寸前の光芒。
これはまさに透過光向けの画題で、この光と影のニュアンスは、反射光ではよく味わえないでしょう。

見かたによっては美しいとも、壮麗とも見えるかもしれませんが、今の私にはひたすら昏く寂しい光景に見えます。でも、その暗さこそが、大いなる慰藉を与えてくれます。

コメント

_ S.U ― 2015年09月27日 12時02分20秒

人間の両目の間隔よりはるか遠くにある雲ですから、普通には両眼立体視はできず、これはレンズで視線の平行化を図る「のぞきからくり」の類かと思ったのですが、実は左右の写真が少し違うようですね。少しだけ時間をずらして撮影した2コマの写真を使っているのでしょうか。

 そうだとしますと、これは時間のずれで空間(角度)のずれを再現しているものでしょうか(雲が太陽より近くにあるように見えますでしょうか?)
 
 台風の前などに空を見ると、月の前を速さの異なる雲がそれぞれけっこうなスピードで通り過ぎて、雲の層が立体的に見えますよね。人間の視覚にも時間・空間融合機能があるようで面白いと思いました。

_ 玉青 ― 2015年09月27日 20時28分10秒

このステレオ写真はどうやって撮ったのか、気になりますね。
確かに普通のステレオカメラで撮ったにしては、左右の写真の違いが大きすぎるので、S.Uさんがおっしゃるように、時間差で撮ったのか、あるいは2台のカメラをうんと離して、「せーの」の合図でパチリとやったのか(その場合、画像の違いはカメラの設定とフィルムの違いによるのかもしれません)、いずれにしても雲の立体感や、雲と太陽の遠近の感覚は見事に再現されています。

_ S.U ― 2015年09月27日 21時42分16秒

>ステレオカメラ
 確かに100メートルくらい離せば「せーの」でいけますね。また、器材と人手を節約しようとすれば時間差もいいでしょう。この時間差法を天体写真に応用した例が、月面の秤動、彗星の移動、土星の輪などでありました。天体はで「せーの」は困難ですね。

 で、たまたまなんですが、今宵の名月はと空を見ますと、ちょうどこのような雲がかかっている状態でしたので、望遠レンズで手持ちで時間差法を試してみました。4秒差くらいでパチリ、パチリとやって、そのあとは、雲の移動方向が横になるように写真を回転させて並べるだけです。作例を上のURLの部分(S.U)に載せました。ご覧下さい。立体的に見えますよね。

 名月や雲の障りを気に止めず

_ 玉青 ― 2015年09月28日 20時33分31秒

あ、見事立体に見えますね!
しかも通常より遠近感が強調されて、不思議な感覚です。
そういえば以前、飛行機で飛びながら雲の立体写真を撮るという話題がありましたが(http://mononoke.asablo.jp/blog/2009/03/21/4195816)、雲の方が動いてくれるなら、地上にいながらにして筋斗雲に乗った気分、そして巨人の気分を味わえるわけですね。(^J^)

_ S.U ― 2015年09月29日 20時53分15秒

飛行機から撮った雲、 それから新幹線から撮った景色などいろいろ応用がききそうですね。天体写真でもいろいろアイデアがありそうです。

_ 玉青 ― 2015年09月30日 22時08分23秒

天体と3D画像は今温めているテーマなので、いずれ大々的に語るやも…
(あるいは語らないやも…)

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