ハーシェルの形見2019年04月25日 06時34分42秒

半月余り前、イギリスの写真術に関する展覧会を紹介する中で、“天文界の父子鷹”ハーシェル親子にちなむ写真について触れました。

■かりそめの光を永遠に固定する~写真術の誕生

それはウィリアム・ハーシェル(1738-1822)が建造した「40フィート巨大望遠鏡」を、息子のジョン・ハーシェル(1792-1871)が、黎明期の写真術によって記録したもので、この貴重な品が、現在280万円弱で売りに出ているよ…という内容。しかも、それを収めた木枠は、ジョン・ハーシェルが使用した「20フィート望遠鏡」の梯子段の転用という、途方もない代物です。

この珍品は1890年に、ハーシェルの孫たちが制作して知己に贈ったもので、同じ手のものは、ロンドンの科学博物館にも所蔵されています。

(© The Board of Trustees of the Science Museum)

記事の中で、自分は「もう二けた安ければ、ぜひ購入したいところ」と書きましたが、同博物館と提携している King & McGaw 社が複製品を販売していると知って、こちらは二桁どころか三桁も安いので、試しに注文してみました(販売ページにリンク)。


オーダーに当たっては、原物のサイズにいちばん近い「extra small」を選び、梯子段のイメージを狙って、チョコレート色の額に入れてもらいました。


撮影当時、すでに取り壊しが決まっていた、木製架台の亡霊じみた姿。
何だか念写のようですが、これが最初期の写真の実力です。


この複製は、同博物館の所蔵品が元なので、写真術の大家・アブニー大佐(Sir William Abney、1843-1920)への献辞や、ハーシェルの孫たちのサインも、そっくりそのままです。(先に売りに出たものとは、この部分がちょっと違います)。


まあ、こうして見る分にはもっともらしいですが、現物を見ると、これが「写真の写真」であり、それをインクジェットで印刷したものと、すぐに分かってしまいます。
正直、無理をして買うほどのものでもないですが、偉大なハーシェルを偲ぶよすがにはなるでしょう。

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