日本の星座早見盤史に関するメモ(12)…三省堂『ジュニア星座早見』2020年06月22日 20時40分21秒

三省堂の『新星座早見』に、ただの『新星座早見』と、『新星座早見 改訂版があったのと同様、『ジュニア星座早見』にも、ただの『ジュニア星座早見』と、『ジュニア星座早見 改訂版がありました。――ここでも略称を使って、前者を「ジュニア元版(もとはん)」、後者を「ジュニア改訂版」と呼ぶことにしましょう。


ジャケットを並べるとこんな感じ。右上が「ジュニア元版」、左下が「ジュニア改訂版」です。

昨日も貼り付けた、三省堂サイトの在庫ページ↓に出てくる『ジュニア星座早見』は、改訂版の方で、その親に当たる『新星座早見』(こちら改訂版の方です)と同時に、1986年に発行されています。そして、ともに仲良く品切れ中です。


「ジュニア元版」が「新星座早見」の子供であり、「ジュニア改訂版」が同じく「新星座早見 改訂版」の子供であることは、このふた組の親子のジャケットを比べれば、一目瞭然です。裏面を並べれば、これまた下のような感じ。

(ジュニア元版の親子)

(ジュニア改訂版の親子)

ジャケットのデザインも、そこに書かれた文句も、本当によく似た親子です。
しかし、似ているのはジャケットだけで、その中身はまったく違います。

(左:「ジュニア元版」、右「ジュニア改訂版」。円形部分の直径はそれぞれ19.8cm、21cm。まったく同じように見えますが、改訂版の方がちょっぴり大きいです。)

そう、『ジュニア星座早見』は、元版も改訂版も、共に4本角タイプであり、しかも素材は厚紙と、その親とは似ても似つかぬ姿で、むしろ祖父母である「旧版」の形質を色濃く受け継いでいるのです。

(祖父母の肖像)

三省堂版に限りません。
フィリップス社のアンティーク星座早見盤をはじめ、かつて各メーカーが盛んに試みたクラシカルな4本角のフォルムは、こうして極東の地で細々と生き延びて、まさに星座早見界のガラパゴス的様相を呈しているのでした。

   ★

ところで、「ジュニア改訂版」は、1986年生まれとはっきりしているのですが、「ジュニア元版」の方は、本体にもジャケットにも記載がないので、正確なことは不明です。

(「ジュニア」元版・裏面)

(同・拡大)

まあ、手元の品に限定すれば、そのジャケットデザインから、これも1970年代の品と想像されるのですが、途中でジャケットデザインの変更があって、その生年自体はもっと古い可能性が捨てきれません。

この点は、先日コメント欄で、S.Uさんに耳より情報を教えていただきました。
ツイッター上に、関連する画像が投稿されているというのです。

さっそく件のツイート【LINK】を見に行ったら――ツイート主は、倉敷の素敵な書店「蟲文庫」さんです――、そこにはズバリ「1961年」のコピーライト表示がありました。これぞ“元版の元版”に違いありません。親にあたる「新版」が1957年の誕生ですから、ジュニアの方は、それから4年遅れで世に出たことになります。

星座早見盤という存在自体、当初から「教育用品」の色彩を帯びていましたが、ここにはっきりと「子供向け市場」が形成され、それが拡大しつつあったことを物語るエピソードではあります。

   ★

ついでに星図の細部も見ておきます。

(ジュニア元版)

(ジュニア改訂版)

時代の変化は、当然『ジュニア星座早見』にも及んでいます。
元版の左下に見える「インドじん座」は、さすがに古風ですね。画像には写っていませんが、改訂版だとちゃんと「インディアン座」に直っています。

   ★

さて、以上で三省堂と渡辺教具製の星座早見については、その変遷が何となく分かりましたが、他のメーカーの品については依然さっぱりです。でも、今のところ手元に何も材料がないので、連載の方はこれで一区切りつけます。所詮は「メモ」ですから、また判明したことがあれば、のんびり書き継ぐことにします。

(一応この項おわり)

コメント

_ S.U ― 2020年06月23日 08時20分46秒

ご引用ありがとうございます。

こちらも私の気づいたことを1点だけ書かせていただきます。

 玉青さんご所蔵の「ジュニア元版」は中央のハトメにプラの補強板がはいっていますね。蟲文庫さんの"元版の元版"はこれが識別できません。写真の精細度がやや不足ですが、ついていない可能性もありますし、現在までにはずれてしまった可能性もあるでしょう。
 
 なぜ、私がここにこだわるかというと、私の旧所蔵版(廃棄済)にはこの補強板がついていた覚えがないのです。しかも、2年ほどで壊れた理由は、このハトメで止められた穴がボロボロに大きくなってハトメより脱落してしまったためでした。ハトメは自身より大きな穴の紙を止めることはできませんので、これは致命的でした。ある日突然星座の板がぼろっと外れて、そのまま一巻の終わりになってしまいました。可能性としては、私のような悲劇を出さないように、版の途中でこの点が改良された可能性があります。

_ 玉青 ― 2020年06月23日 21時11分27秒

おお、これまた濃やかな観察。確かに昔のものには補強板がありませんね。
では「本家」の『新星座早見』の方はどうかな?と思ったのですが、残念ながら今日の記事で紹介した「スリーショット」でも、肝心のところが隠れていて、確認できませんでした。

それにしても、S.U少年を襲った悲劇には同情を禁じ得ないものの、同時に少年期の記憶のなんと強固なことか。そのこともまた驚きです。まさに三つ子の魂何とやら、故郷忘じがたく候…ですね。

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