チェット・レイモ著 『夜の魂 - 天文学逍遙』 ― 2006年04月02日 06時24分18秒

★原題 The Soul of the Night: An Astronomical Pilgrimage (1985)
邦訳(山下知夫訳、工作舎)は、1988年の出版。
同社の「プラネタリー・クラシクス」シリーズの1冊。
(出版社HP http://www.kousakusha.co.jp/BOOK/ISBN4-87502-142-9.html)
昨日、19世紀の天文趣味とキリスト教との親和性ということを言ったのですが、考えてみると趣味としての天文学には、今でもそうした側面が濃厚にありますね(中には、ない人もいるかもしれませんが)。
深夜、肉眼であれ、望遠鏡を通してであれ、宇宙と向き合うときの感覚には、何か曰く言い難いものが常にまつわりついています。
今ではそれはキリスト教的な意味での「神」ではなく、「スピリチュアリティ」と言えばいいのか、超越的なものに対する畏怖の念と言えばいいのか、そんなものの気配がひたひたとします。
このチェット・レイモの本は、天文趣味における観想的側面を、滋味豊かな文章で綴った名著。この本も既に出てから20年にもなるんですね。しかし、今でも読むたびに新鮮な感じ、心がスッと澄む感じがします。
天文学の本なのに、ここには宇宙の写真は1枚もなく、挿絵はすべて鳥、虫、樹木、山並み etc を描いた漆黒の木版画。挿絵と文章の調和から、「静かな本」という形容が、私にはいちばんしっくり来ます。
こうした本がいまだに版を重ねているのは真に頼もしいことで、僭越ながら、この本を手にする人には「同志よ」とつい呼びかけたくなります。
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