ネズミの星2020年01月01日 07時29分03秒

新年明けましておめでとうございます。
あっというまに1年が過ぎ、干支もイノシシからネズミにバトンタッチです。

(イノシシ頭骨(奥)とマウスの全身骨格(手前))

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子年ということで、ネズミに関する星の話題がないかな…と思いましたが、どうもネズミの星座というのはなさそうです。(さっき検索したら、尾っぽの長いネズミのような形をした「マウス銀河」というのが出てきましたが、もちろんこれはごく最近ネーミングされたものでしょう。)

でも、日本にはちゃんと「子の星(ねのほし)」というのがあって、これは誰もが知ってる星です。十二支を方位に当てはめると、「子」は真北になるので、子の星とはすなわち北極星のこと。(真北の「子」と真南の「午」を結ぶのが「子午線」です。)

野尻抱影によれば、これは青森から沖縄まで全国的に広く分布する名前で、渡辺教具の和名星座早見盤(渡部潤一氏監修)にも、ずばりその名が載っています。

(元旦22時の空。中央上部に「ねのほし」)

「子の星」の名が、かくまで広く普及しているのは、漁師や船乗りにとって、それが操船上不可欠な目当てとして重視されたからでしょう。

その光は、決してまばゆいものではありません。それでも波立ち騒ぐ海をよそに、常に天の極北に座を占め、人々の指針となる姿は実に頼もしい。
今のような混乱した世の中にあっては、そうした存在を、人間社会にも求める気持ちが切です。

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さあ、新しい年への船出です。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

豪奢なる科学2020年01月02日 05時52分09秒

現在、ニューヨークのメトロポリタン美術館(MET)で、企画展『驚異を作る―ヨーロッパの宮廷における科学と栄光(Making Marvels: Science & Splendor at the Courts of Europe)』が開催中です。会期は今年の3月1日まで。

要は、ひところ大いに流行ったヴンダーカンマーチックな展覧会の新顔です。人によっては食傷気味かもしれません。でも、近代科学の揺籃期に生まれた、贅の限りを尽くした工芸品的な科学機器は、やっぱり魅力的ですし、私は今でも大いに心惹かれます。


上のページに飛んでいただければお分かりのように、METは実に太っ腹で、167点の全展示品の詳細を、高解像との写真と共にWEBで詳しく紹介してくれています。ですからニューヨークまで行かなくても、十分その内容を楽しむことができます。


こういう金・銀・珊瑚的なきらきらしいオブジェが並んでいるのは、何といっても景気がいいです。今の日本は、どうも湿っぽくて貧しい話題が多いですが、正月ぐらい心だけでも豊かにしなければなりません。

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まあ、あまり独りよがりな鑑賞態度も良くないので、おまけとして、主催者による展示概要を適当訳しておきます(主催者側の意図としては、科学史的な視座よりも、そうした品が有した社会的機能に強く注目しているようです)。

 「1550年から1750年にかけて、ヨーロッパのほぼすべての王家が、高価で愉しい品々から成る膨大なコレクションを築き上げました。そうした惜しみない国費支出と貴金属類の展観こそが、権力のあかしと考えられたからです。同時に多くの君侯は、芸術的・技術的な新機軸を所有することで、地位の向上がもたらされると信じたので、往時を特徴づける宮廷の宴席では、こうした品々が麗々しく披露されました。

近代初期のヨーロッパの君侯が蒐集した驚異に満ちた品々と、そうした品々が展観された文脈、それが当の統治者たちの支配能力をいかに表現したか――本『驚異を作る』展が探求するのは、その複雑な様相です。

展示されるのは、置時計、自動人形、家具、楽器、宝飾品、絵画、印刷物等々から成る約170点の品々で、METのオリジナルコレクションと世界中の50以上の個人・機関からの借用品が含まれます。

ちょうど21世紀のテクノロジーが現代の我々の注意を引き付けるように、緊張感と驚異の念、そして劇的変化によって、往時の耳目を集め、楽しませた、驚きに満ちた新機軸の数々を、来館者は目の当たりにされることでしょう。」

星時計(1)2020年01月03日 19時58分56秒

先日、「子の星(北極星)」のことを話題にしました。
不動の北極星を中心に、24時間でぐるっと空を一周する星たち―。

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まあ、大ざっぱに言えばそうなのですが、厳密に言うとちょっと違います。
北極星は決して不動ではなく、ほんのちょっと動いているし、星たちもきっちり24時間周期で回っているわけではありません。

真夜中に頭上にあった星が、次の日も、次の日も、そのまた次の日も、ずーっと真夜中に頭上に来るのだったら、その星に限らず、真夜中に見える星景色は、毎日そっくり同じはずです。そこには、星座の季節変化の生じる余地がありません。
 
実際には、真夜中に頭上に輝いている星は、23時間56分で再び頭上に戻ります。
ちょっきり24時間後の位置で比べると、次の日には4分だけ先に(西寄りに)進んだ場所に位置することになります。

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これはもちろん、地球が公転しているからです。
地球は自転しながら、同時に同じ向きに公転もしているので、両者の「合成回転速度」は、自転速度(や公転速度)単独よりも、ちょっぴり早くなります(エスカレーターを駆け上がっている人を想像してください)。

こうして、1日に4分、1か月で120分、半年経つ頃には12時間もずれて、かつて頭上にあった星は、今度は地面の真下となり、空を彩る星座はすっかり入れ替わってしまいます。そして1年たつと、ちょうど24時間ずれて、再び懐かしい星が頭上に輝く…というわけです。

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以上のことは小中学校の理科のおさらいです。

上の説明は、太陽や月と同じく、星が「東から昇って西に沈む」イメージで語っています。その方が何となく分かりやすいからですが、これは南向きに空を見上げたとき限定の話です。

北極星周辺の「こぐま座」や「カシオペヤ座」なんかは、そもそも地面に沈まないし、方角で言うと西から東に動いて見える時もあって、上の説明は一寸そぐなわいところがあります。

でも、「星が天を一周する時間は23時間56分」で、「1日4分ずつ天球上の位置がずれていく」という事実は、北の星にも完全に当てはまります。

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これを利用したのが、こぐま座やカシオペヤ座、あるいは北斗七星の位置から時刻を知るための「星時計」です。古くは「ノクタラーベ」「ノクターナル」と呼ばれました。

ある日、ある時刻における、星座の位置は既知ですから、逆に日付と星座の位置が分かれば、そのときの時刻を知ることができます。(原理的には南の星座でもいいのですが、北の星座は、北極星との位置関係から、天球上の位置を見定めやすいので、いっそう便利です)。


上はニューヨークのヘイデン・プラネタリウムが1950年に発行した星時計(ずばり「スター・クロック」とネーミングされています)。

(全体は3層構造)

使い方は至極簡単。まず最外周の日付目盛りに、黄色い回転盤の「12」の位置を合わせます(これは時刻目盛りの基準となる「深夜12時」を表します)。

(1月3日に盤を合わせたところ)

この状態で、東西の水平・南北の垂直を保ちながら、中心孔に北極星を入れ、次に紺色の回転盤を回して、実際の星座の位置に合わせればOK。この星時計では、北斗のマスの先端の2星(ドゥーベとメラク)を結ぶ線が時針になっており、その指し示す数字が現在の時刻です(目盛りは午後6時から午前6時まで、反時計回りに振られています)。

(画像は1月3日、午後8時半の星座位置。北極星からこぐま座がぶら下がり、カシオペヤ座は北極星の左上、北斗は右下に位置します。)

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よくよく考えると、この星時計は、普通の星座早見の北極星付近を拡大しただけのもので、普通の星座早見盤を星時計に使うこともできるわけですが、関係部分を拡大した分、こちらの方が使い勝手が良いのが味噌です。

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ボーイスカウトのキャンプとかを除けば、これを実用にする現代人はいないでしょう。でも、持ち運びのできる時計がなかった頃は、昼間の日時計と併せて、なかなか重宝されたものだそうです。

(この項つづく)

星時計(2)2020年01月04日 14時28分09秒

アストロラーベや、四分儀、八分儀、あるいは古い日時計とか、昔の測器や航海用具にロマンを感じる人は多いようで、そういう人向けに、お手頃価格でリプロを作っているメーカーがあります。まさに需要があるところに供給あり。

いずれもスペイン・マドリードに本拠を置く、ヘミスフェリウム社(Hemisferium)アンティクース社(Antiquus)はその代表です。

両社の製品は、ラインナップも、価格帯も、とてもよく似ているので、どっちがどっちか分からなくなることがあります。それも道理で、両社はもともと同じ会社でした。

1980年代に創業したビジャルコル社(Villalcor, S.L.)が双方の母体。
その後、経営をめぐってお家騒動があったらしく、創業社長のホアキン・アレバロ氏(Joaquín Carrasco Arévalo)が、社を割って2005年に新たに立ち上げたのがヘミスフェリウム社で、残った方が新たに掲げた看板がアンティクース社…ということらしいです。まあ、青林堂と青林工藝社とか、似たようなことはどこにでもあります。

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(左:ヘミスフェリウム社、右:アンティクース社の製品)

ここで両社のノクターナルを順番にみてみます。
まずはヘミスフェリウム社から。

こちらは1568年、フィレンツェのジローラモ・デラ・ヴォルパイア(Girolamo della Volpaia)が製作したものがモデルになっていて、現物は同地の科学史博物館に収蔵されています。


同館のカタログ(https://www.slideshare.net/marcelianyfarias/catlogo-do-museo-galileo)では、p.45にある「目録番号2503」がそれ。何から何までそっくり同じとはいきませんが、何となく雰囲気は出ています。

使い方は、ヘイデン・プラネタリウムの星時計とほぼ同じです。

深夜12時の目盛りに相当するのが、「Media Nox(ラテン語で‘真夜中’の意)」と書かれたポインタで、これは時刻盤たる中円盤と一体化しています(以下、「ノックス・ポインタ」と呼ぶことにしましょう)。

まずノックス・ポインタを、最外周の日付目盛りに合わせます(ただし、改暦のゴタゴタと、ヴォルパイアの依拠した暦本に間違いがあったせいで、このノクターナルを使いこなすには、現代の暦日に38日を加えよ…と、付属の解説書に書かれています)。

(1月4日に使うときは、38日を足して、2月11日にノックス・ポインタを合わせます。)

次いで中心に北極星を入れて、「Horologium Nocturnum」と書かれたハンドルを回し、ハンドルのエッジと、北斗のマスの先端2星を結ぶラインを合わせます。あとはエッジ位置の時刻盤表示を読み取ればOK。

(付属解説書より)

ただし、ヘイデンの星時計と違うのは、ヘイデンの方はダイレクトに現在時刻が表示されているのに対し、このノクターナルの時刻盤は、「あと何時間で深夜になるか」が刻まれていることです。


したがって、上のように「3」の位置に北斗があれば、「あと3時間で24時」、すなわち現在21時であることを意味します。念のため、ヘイデンの星時計や、ふつうの星座早見でも確認すると、1月4日・21時の北斗の位置は、確かにこうなることが分かります。



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ところで、このノクターナルは、中円盤のさらに内側にギザギザのついた小円盤が付属します。


これは、「日没から現在まで何時間経過したか」を知るためのものです。なぜそれが必要かといえば、昔は日没を基準に、「日没後一刻、二刻、三刻…」という時の数え方があったからだそうです。

小円盤の内側には、毎月の上旬と下旬の「日没~真夜中」までの時間が、丸い数表の形で載っています。例えば6月上旬だと「4時間28分」、12月上旬だと「7時間32分」という具合(このノクターナルは、フィレンツェの緯度に合わせて作られています)。

次に読み取った数字と、時刻盤の数字を合わせます(時刻盤の数字は、「深夜までの残り時間」なので、ダイレクトに合わせれば良いわけです)。

(薄赤で囲んだように、1月上旬の「日没~真夜中」時間は7時間20分です。その位置に小円盤のポインタを合わせたところ)

ギザギザの山の中に書かれた「1、2、3…」の数字が「日没後○刻」を示し、1月4日・21時の例だと、ハンドルのエッジの位置から「日没後五刻」と読めます。


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なお、ノクターナルの脇にブラブラおもりが下がっているのは、裏面が日時計(測時四分儀)〔LINK〕になっているので、それ用です。

(裏面)

(この項つづく)

余滴2020年01月04日 15時34分06秒

「鵜飼」は、殺生禁断の川でこっそり鮎漁をした漁師が、仲間になぶり殺しにされた末、地獄で責め苦を受ける…というのが前段。後段では、旅の僧の供養によって漁師が無事成仏を遂げたことが語られ、法華経の功徳を讃嘆する内容になっています。

その前段で漁師が責め殺されるシーン。
物陰で待ち構えていた人々が、漁師の前にいっせいに姿を見せ、激情に駆られて絶叫します。「狙う人々なっと寄り。一殺多生の理にまかせ。彼を殺せと言いあへり。」

このとき人々が口にした「一殺多生(いっせつたしょう)」の論理。
「一人を殺すことで、他の多くの存在が助かるのだ」というのは、何となく素朴な常識に叶うところがあって、実際そういう行動を支持する人は少なくありません。

何を隠そう、私の中にもそういう考えが生まれる時があります。
でも、それが間違っていることも同時に感じ取れます。
その主張は「理」をうたいながらも、実際には「処罰感情」やら何やらの「情」に過ぎないことが多く、じっくり考えるとどこかが破綻しているからです。

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正月早々、きな臭いニュースが聞こえてきます。
対米従属国家たる日本にとって、遠い国のことでは全くありません。
いろいろ訳知り顔で解説する人もいますが、結局のところ「一殺多生の理」を出ない解説が多いように思います。

今回殺害されたソレイマニという人が、言われるように非道な蛮将であったにしろ、アメリカのやり口は、それに劣らず無茶苦茶です。そもそも他国の領内で、他国の要人をしれっと殺害する国家を、ならず者国家と呼ばずして、一体何と呼ぶべきか?

少なくとも、人道的立場からソレイマニを非難する人は、同じ論理でトランプを非難しないと、首尾が整わないと思います。

星時計(3)2020年01月05日 08時51分52秒

今回の一連の記事は、我ながらかなりくどい感じがします。
自分でも分かってなかったことを、ひとつひとつ確認しながら書いているからで、どうにもやむをえません。

今日はアンティクース社のノクターナル。


アンティクース社のノクターナルは、付属の解説書を見ても、オリジナルの記載がありませんが、やっぱり16世紀あたりの品にモデルがあるのでしょう。
下の出っ張りは「持ち手」で、使うときはこの向きに立てて使います。

(付属解説書より)

このノクターナルの特徴は、おおぐま座α、β星の「ドゥーベ、メラク」以外に、こぐま座β星の「コカブ」や、カシオペヤ座α星の「シェダル」を使っても時刻が測れるようになっていることです。そのため、真夜中を示すノックス・ポインタの代わりに、3星座に対応した3つのポインタが、羽状に突き出ています。

(上に突き出ているのはおおぐま座、左側はこぐま座用のポインタ。画面の外にカシオペヤ座用のポインタもあります。)

2つの星を使う分、ドゥーベとメラクを目当てにするのが、たぶん最も精度がいいはずですが、観測条件によっては、建物や樹木、あるいは雲に隠れて、思うようにいかない場合もあるので、こういう工夫が求められたのだと思います。

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使用法は、まず3つの目当ての内、どれを使うかを決めて、そのポインタを外周の日付目盛りに合わせます。次いでハンドルを回して、そのエッジを目当ての星に合わせ、時刻盤の数字を読み取る…という操作法は、他のノクターナルと共通です。


昨日と同じく1月4日・午後9時に、おおぐま座で時を測ったと想定して、目盛りを合わせてみました。十二宮の内側の数字が時刻目盛です。当たり前ですが、昨日の画像↓とほとんど同じ配置になります。


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ここまでは特に問題ないでしょう。でも、この品には時刻目盛の内側にさらに目盛があって、1~29の数字が刻まれています。


目盛には小さなつまみが付いていて、「Index Lunae et Aspectuum Plan」と書かれています。当然、これは月齢を意味しているのでしょう。でも、この部分の使い方が、解説書を見てもさっぱり分かりませんでした(負け惜しみじゃありませんが、この解説の英文はかなり怪しげです)。


ハンドルをグルグル回すと、その付け根にある円孔にムーンフェーズが現れ、例えば23の位置に合わせると、確かに下弦の二十三夜月が見えます。

でも、それが星時計とどう関係するのか、そして、つまみに書かれた後半部分「惑星のアスペクト(Aspectuum Plan[etarum?])」は、一体どこに表現されているのか、たぶん占星術と関係するらしい、このパーツの用法は今のところ謎です。

(この項さらにつづく)

星時計(4)2020年01月06日 06時54分12秒

一定の品質のものを、安価に安定的に供給するのも立派な技術ですから、ヘミスフェリウム社やアンティクース社を貶める必要は全くありません。とは言え、その製品はやはり土産物的な色彩があって、「本物」とは懸隔があります。

そうしたリプロメーカーとは一線を画すのが、スイスのアストロラーベ作家、Martin Brunold の衣鉢を継ぐ、ドイツのクロノス工房です(CHRONOS-Manufakturhttp://www.chronos-manufaktur.de/en/index.html)。

彼らは製品に古色を付けることを一切しません。彼らが作っているのは、「懐かしのリプロ」ではなく、「現代における本物のアストロラーベ」だからです。だからこそ、その製品はエレガントで美しい。ちょっと大げさに言うと、両者の違いは、観光地で売っている模造刀と、現代の刀工が鍛えた日本刀の差だ…というと、そのニュアンスをお分かりいただけるでしょうか。

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そのクロノス工房のノクターナルがこちら。


上述のMartin Brunold の設計になるもので、1520年ころのオリジナルを元に、新たに計算し直した目盛りを刻んであります。


これも実際に使うときは、取っ手を下にして、垂直に立てて使います。

この品で特徴的なのは、目当ての星がこぐま座の「コカブ」である点、そして最外周の目盛りは十二宮を表しているので、月日で合わせるには、更にその内側の各月の三分線(数字は書かれていません)を基準にしないといけない点です。

それ以外の操作法は、これまでの記事の内容から、贅言不要でしょう。

(ノックス・ポインタは4月7日頃、こぐま座の位置は午後8時を示しています。なお、ノックス・ポインタの他に、8時のところのギザが一寸飛び出しているのは、おおぐま座用です。おおぐま座で測時するときは、こちらを日付に合わせます。)

(木製台座付き)

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…というわけで、手元のノクターナルを一通り眺めてみました。
ノクターナルはわりと単純な器具だと思いますが、それでもここまで書いて、ようやく理解できたことも多いので、やっぱり書けば書いただけのことはあります。

(この項おわり)

余滴2020年01月06日 07時41分50秒

ソレイマニ氏殺害の件。
「お前だって、いつでも消せるんだぞ」
…というメッセージだと、北朝鮮のリーダーが受け止め、態度を硬化させたら―。
そう思うと、何とも恐ろしいです。
西アジアと東アジアで同時に火が噴いたら、本当に世界大戦になってしまうでしょう。
そういうことも想像しながら、今の政治は舵取りが必要だと思います。

されど4分2020年01月07日 06時37分36秒

そういえば、以前妙な時計を買いました。



ご覧のとおり詳細な星座早見盤を組み込んだ、なかなか星ごころに富んだ時計なんですが、要は中国で作られた、アストロデア(シチズン)の‘ぱちもん’です。

(左がアストロデア。アストロデアのことは、こちらから3回シリーズで書きました。)

これのどこが妙かというと、その星座盤のつくりです。
この星座盤はただの見かけ倒しではなく、確かに自動でゆっくり回転しており、そこは立派なのですが、その回転周期は、実際の星空の23時間56分ではなく、24時間ちょっきりです。

これだと何か月経っても夜空の景色は変わらず、同じ星空を眺め続けなければいけません。そのため、星座盤の位置をときどき手動で調整しなさい…という指示が、説明書には書かれています。

何だか変だなあと思います。
購入する側も釈然としないし、作り手側の意識としても、不全感が残るんじゃないでしょうか。いかにも作り切ったという感じがありません。とはいえ、背に腹は代えられず、きっとこの4分差を組み込むと、コストがえらくかかるのでしょう。

たかが4分、されど4分。

繰り返しになりますが、この4分の差は、地球の公転が生み出しているものです。
この1日たった4分の「努力」が、つもりつもって季節の変化を生み、頭上では星座が移ろい、地上では雪合戦をしたり、スイカ割りをしたりすることになるわけですから、ましてや1日5分も努力すれば、腹筋が割れたり、英語が話せるようになったり、資格試験を突破できるのは当然だ…と主張する人がいるのも、うなずけます。

たかが4分、されど4分。
そのことを問わず語りに教えてくれるのが、この時計のいわば「徳」なのかもしれません。

(購入時の商品写真)

太陽シミュレーター2020年01月08日 21時12分34秒

先日来、星が空をぐるっと一周する時間は23時間56分だという話をしています。
では、改めて24時間は何を意味してるのか…といえば、こちらは太陽が空を一周する時間です。そもそも太陽の日周運動を基準に、昔の人が編み出したのが、24時間制です。

ただ、これも厳密に言うと、太陽の日周運動にも季節による遅速があって、常に24時間というわけではありません。平均すると24時間ということです(地球の楕円軌道や地軸の傾きのせいです)。

そうした太陽の動きを、いちばん単純に模した時計を見つけました。


24時間表示の1本足の時計。時針のみで分針はありません。
これ以上ないというぐらいシンプルな構造ですが、これを見ていると、いろいろ考えさせられます。


真ん中を水平に区切る境界は大地です。
大地より上に太陽があれば昼、地面の下に沈めば夜で、それが太陽と月の絵でシンボライズされています。

そして、太陽の動きを表現するのは、この針の動きそのものです。
この時計の中の世界では、毎日朝6時に日が昇り、12時に南中し、18時に日没を迎えます。

実際、赤道付近や、日本でも春分や秋分の頃は、こんな風に太陽が動くわけで、太陽は天然の巨大な時針であり、太陽の動きを模して時計が生まれたことが、これを見ると素直に納得できます。

でも、ここから先はどうか?
この単純なからくりを、さらに正確な太陽シミュレーターとするには、どこを改良すればよいのか?…ということになると、話は途端に難しくなります。私にも何をどうればいいのか分かりませんが、その試みは、たぶん古代の天文学の発展のあとをなぞることになるでしょう。


ちなみに、メーカーはスヴァールバル社(Svalbard Watches Ltd.)。
タックス・ヘイヴンの関係で、キプロスが会社所在地になっていますが、実際の本拠はイギリスのようです。