パリ天文台、あるいは時の流れの不思議2015年02月08日 10時34分36秒



意識して買っているわけではありませんが、天文関連の品を探しているうちに、パリ天文台の絵葉書も少しずつたまってきました。

20世紀初頭、ベル・エポックの空気が流れるパリ天文台。

もちろん、パリ天文台は健在なので、ここに写っているのと同じような光景は、テロで騒然とする今でも、現地に行けば目にすることができるはずです。

でも、同じようでいて、どこか違う。
改修されて形の変った箇所もあるでしょうし、そうでないところも、100年の星霜を経て、少なからず古びが増していることでしょう。そして、絵葉書の隅に写っている人たちは、すべてこの世を去って久しい。

そう思うと、この古風な石版の絵葉書たちが、一層いとしいものに思えてきます。

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…と、当たり前のことを殊更に書いたのは、私はどうも時間と空間を取り違える癖があるからです。

例えば、子供のころ住んでいた、東京のT町。
私は今でもT町に行けば、懐かしい友達が子供の時の姿のままで飛び出してきて、「○○ちゃん、遊ぼう!」と声をかけてくれるような気がします。いや、単にそういう気がするだけでなく、それは明白な「事実」のように感じられます。

現在の私と当時の私との間には、越えられない時間の隔たりがあるのに、私はそれをT町までの空間の隔たりに置き換えて、そこに行きさえすれば、時間も越えられると思い込んでいるのです。

そして、学生時代に住んでいたK町に行けば、今でも昔のままの生活にスッと入り込める気がするし、結婚当初住んでいたN町に行けば、幼い息子を連れて歩いている自分自身に会えそうな気がします。

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冒頭では、自分に言い聞かせるように書きましたが、私はやっぱり心のどこかで、パリに行けば、そこに100年前のパリがそのままあるような気がしています。(まあ、日本に比べれば、建物も街並みも古いことは確かでしょう。)

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私が将来(ごく近い将来です)認知症になったら、きっと「(今はもうない昔の)家に帰る!」と騒ぎ立てて、周囲を困らせることでしょう。
人間が体験する時間、そして記憶とは本当に不思議なものです。