カテゴリー縦覧…望遠鏡・顕微鏡編: ある夫婦と望遠鏡のものがたり2015年02月23日 05時52分16秒

今数えたら、このブログにはカテゴリーが63個もあるんですね。
本当に「縦覧」できるのか、ちょっと自信がありませんが、踏破を続けます。
今日は「望遠鏡・顕微鏡」編です。

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以前、セピア色の絵葉書を買いました。


買った相手は、ドレスデンの絵葉書屋さんです。
購入時の商品説明は、絵葉書形式の古い個人写真。未使用。絵葉書/1920年代/ドイツ国(Deutsches Reich)/個人/天文学/望遠鏡/オリジナル/アンティークという簡略なもので、詳細は一切不明です。

(絵葉書の裏面)

素敵な望遠鏡と男女の肖像。おそらくご夫婦でしょう。
でも、何だか不思議な構図であり、分からないことばかりです。
そもそも、これは何時なのか、どこなのか、そして誰なのか?

二人の服装と、望遠鏡の構成からすると、たしかに絵葉書屋さんが言うように、1920年代のドイツの光景のように思えます。あるいはオーストリア?



それにしても、この望遠鏡は実に立派です。真新しく、ピカピカしています。
三脚も、赤道儀もがっしりしているし、屈折と反射を同架しているのもスゴイです。
この望遠鏡はツァイス製でしょうか? 当時いくらぐらいしたのでしょう?
反射望遠鏡の接眼部に付いているのは、双眼観測装置?


まだ若く、見るからに幸福そうな二人。
このご主人は天体観測を趣味とし、豪華な機材が届いたのを祝って、写真師を呼び、それを知人友人にも知らせようと絵葉書に仕立てた…のかもしれません。

その傍らで、かすかに微笑む夫人。
ゆったりしたシルエットからすると、彼女はあるいは身ごもっているのかもしれません。
レースのカーテン越しの柔らかな光が、清潔な室内に満ちています。
幸福、希望、静謐。

この幸せよ、永く続け…と、二人は強く願ったはずです。
でも、ドイツ・ワイマール共和国の平和は、そう長くは続きませんでした。
それを予見しているのか、ご主人の横顔には微かな憂いの影が差しているようにも見えます。

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もちろん、すべては私の勝手な想像です。
しかし、家族が互いに睦み合い、微笑みを交わし、そして夜ともなれば星を眺めて物思いにふけるような、平穏な生活の貴さを、この1枚の絵葉書に強く感じます。

そして、この国の今のことを、ふと考えます。