天文家への警鐘…カテゴリー縦覧:写真・幻燈・スライド編2015年06月04日 22時42分48秒

昨日の絵葉書は、天文家が天使におちょくられてギャフンとなる…というオチのようでした。天文学がいくらハードサイエンスだ、ビッグサイエンスだと、しかつめらしい顔をして見せても、やはり筒先を空に向けて、星界の消息を覗き見しようとする時点で、なにがしかの怪しさは逃れ難く、異形の者に魅入られたりすることもあるわけです。

(左右の差し渡しは21.5cm、丸窓の径は6cm)

上は19世紀フランスの幻灯種板。
金属ケースの中を、ガラス絵がスライドすることで、絵柄が変るという仕掛けが施されています。


このやっぱりトンガリ帽子の古風な天文家も、最初は熱心に太陽や流れ星を観測していました。そして天界の驚異を目にして、大いに心が満たされていたのです。


しかし、好事魔多し。
彼の視野にはいつか悪魔の跳梁が見えるようになります。
そして、耳には悪魔の囁きが…。

   ★

天文家たるもの、第一線の研究者から、ベランダ観望家に至るまで、これは大いに用心せねばなりません。大宇宙は―その恐るべき虚無は―なまなかな気持ちで対峙できるような相手ではありません。

ときには筒先から目を離し、グラスを傾けたり、パイプを握り締めたりする必要があろうというものです。

コメント

_ 蛍以下 ― 2015年06月05日 14時36分45秒

確かに、初めて望遠鏡を覗き込んだ時は、なにか怖かったのを覚えています。
明け方の空に、ぴたりと静止した直線の不思議な光を見て「異次元世界の入口かも!」などと一人で騒いだこともありました。今思えばただの流星痕だったのでしょう。

_ 蛍以下 ― 2015年06月05日 14時52分29秒

追記
このようなスライドは本当に素敵ですね。
幻灯は賢治の「やまなし」で、その名を知って以来惹かれつつも、残念ながら縁遠い存在です。コレクションを御紹介いただけたら嬉しいです。

_ T.Fujimoto ― 2015年06月06日 10時52分26秒

雰囲気が、素敵です。

_ 玉青 ― 2015年06月06日 12時13分58秒

○蛍以下さま

空を覗き込んだときに感じる畏怖の念は、大切にしたいですね。
それを失うと、人間、何か非常に平板な存在になってしまう気がします。
幻灯スライドはまだまだ沢山あって、今後も随時登場しますので、どうぞご笑覧ください。

○T.Fujimotoさま

ありがとうございます。
他愛ないといえば他愛ない品ですが、何といっても絵柄が愛らしいのが気に入っています。

_ S.U ― 2015年06月06日 16時57分59秒

 私の幼かった頃には、地区の公会堂や幼稚園で「幻灯会」なるものがあって、「幻灯」というのは、それこそ幼稚園児でも知っている言葉でしたが、何かおどろおどろしさと高揚感が入りまじった感覚でした。当時は、すでに家庭にテレビがあり、映画館でカラーの怪獣映画を観る時代でしたから、幻灯ごときにインパクトがあるはずはありませんが、あの存在感は、何か映像に対する本能的・根源的な感覚によるものだったのでしょう。

 現在でも、「幻灯会」なるものがあるか検索してみると、これがけっこう健在のようで、昭和レトロ趣味のものと現役の幼稚園児向けのものがまじっているようです。考えてみると、幻灯は廃れたかもしれませんが、PCとプロジェクタを画像ケーブルでつなぐと、いまでも「幻灯」はできるわけで、作画は、お絵かきソフトでも、パワポでも、デジカメ写真でも何でもいいわけですから、望みのままです。この「パワポ」と「幻灯」の間のギャップかつ同一性というのは、いったいこりゃ何なんでしょうね。
 現代の子ども達も、当時の幻灯機を使うのか、最新のLEDのプロジェクターを使うので、違う印象を持つのでしょうか。

_ 玉青 ― 2015年06月07日 07時45分45秒

幻灯会、懐かしいですね。
どうでしょう、今後の液晶プロジェクターは、周辺減光と光量のゆらぎを備えた「幻灯会モード」を備えるというのは。さらに、かすかな「ジジジ…」という音がすると、もっといいかもしれません。そして、ときどき虫の影がヒュッと画面を横切る演出があるとか…。まあ、そこまでするなら、本当の幻灯を使った方がいいですね。(笑)

_ S.U ― 2015年06月07日 17時53分46秒

>「幻灯会モード」
 ああ、これいいですね。売れるんじゃないでしょうか。観てると泣けてくるかもしれません。
 
 幻灯会の翌日が仕事のプレゼンで、モードの戻し方がわからないと、新企画商品の前を虫の影が飛んだりで、面白いことになるでしょうね。

_ 玉青 ― 2015年06月09日 07時28分09秒

あはは。
でも、それが怪我の功名となって、商談成立…とか。(笑)

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