プラネタリウム自慢 ― 2016年01月17日 11時43分55秒
ごそごそと布団の中から這い出し、新聞を手に取ったら、プラネタリウムの記事が載っていました。東海地方のローカル面に載ったものなので、よその土地の人の眼に触れることは少ないでしょうし、何せ病み上がりでもあるし…と言い訳して、ペタッとここにスクラップしておきます。
(ちょっとシワシワですが…。朝日新聞 2016年1月17日、「Asahi+C Extra」面より)
記事は2011年にリニューアルした、名古屋市科学館のプラネタリウムを紹介しています。
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名古屋の人が好んで使うフレーズの一つに、「日本最大級」というのがあります。
地元の施設を紹介するとき、よく聞かれるのですが、「日本最大」と言い切らず、「最大級」と言うところがミソ。「日本最大とは言わんけど、日本最大級と言っとけば、まあ嘘でもないし…」という、自慢しつつ卑下するような、卑下しつつ自慢するような、妙に屈折した表現です。
しかし、名古屋市科学館のプラネタリウムは、その大きさにおいて文字通り日本最大です。いや、それどころかギネス認定も受けた、世界最大のドーム径を誇ります。
朝日の記事が真っ先に取り上げているのも、この点です。
(ドームの大きさ較べ。記事によれば国内ではこんな順番だそうです。)
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ここでネットに当ってみたら(“the biggest planetarium in the world”で検索)、トップに表示されたのが以下の記事。
そのランキングは、
第1位 ヘイデン・プラネタリウム (米、ニューヨーク)
1935年オープンの由緒あるプラネタリウムです。2000年にリニューアルし、組織的にはアメリカ自然史博物館の一部門です。リニューアル後は、球状ドームの上半分が「スターシアター」、下半分が「ビッグバンシアター」になり、それぞれが現在の宇宙のドラマと、宇宙創成のドラマを見せてくれている由。
第2位 サミュエル・オースチン・プラネタリウム (米、ロサンゼルス)
こちらも1935年にオープンした、西海岸最古のプラネタリウム。ハリウッド観光の名所であるグリフィス天文台に併設されています。
そして―
第3位 名古屋市科学館 (日本、名古屋市)
おお、来ました。世界中に無数にあるプラネタリムの中で、堂々の第3位です。
リンク先では、こんな風に解説されています。
リンク先では、こんな風に解説されています。
「名古屋市科学館は、直径35メートル(115フィート)のドームと350席を備えた、世界最大のプラネタリウムの所在地である。しかもこのプラネタリウムは、単に最も大きいばかりでなく、これまでに建てられたプラネタリウムの中で、最も洗練され、かつ最も高い品質を誇るものの一つである。」
もう、ここまで書いてもらえば十分でしょう。文句なしに立派なものです。
もう、ここまで書いてもらえば十分でしょう。文句なしに立派なものです。
4位以下のランキングは次の通り。
4位 芸術と科学の都レミスフェリック (スペイン、ヴァレンチア)
5位 アドラー・プラネタリウム (米、シカゴ)
6位 H.R.マクミラン宇宙センター (カナダ、バンクーバー)
7位 モリソン・プラネタリウム (米、サンフランシスコ)
8位 アルバート・アインシュタイン・プラネタリウム (米、ワシントンD.C)
9位 ガリレオ・ガリレイ・プラネタリウム (アルゼンチン、ブエノスアイレス)
10位 ピーター・ハリソン・プラネタリウム (英、ロンドン)
5位 アドラー・プラネタリウム (米、シカゴ)
6位 H.R.マクミラン宇宙センター (カナダ、バンクーバー)
7位 モリソン・プラネタリウム (米、サンフランシスコ)
8位 アルバート・アインシュタイン・プラネタリウム (米、ワシントンD.C)
9位 ガリレオ・ガリレイ・プラネタリウム (アルゼンチン、ブエノスアイレス)
10位 ピーター・ハリソン・プラネタリウム (英、ロンドン)
文化施設として、世界のベスト3に入るものが、日本に果たしていくつあるか?
こうなると、名古屋人は屈折した思いをサラリと捨てて、堂々と胸を張っていいし、いっそ日本中の人が、わが事としてお国自慢してもいいぐらいです。
こうなると、名古屋人は屈折した思いをサラリと捨てて、堂々と胸を張っていいし、いっそ日本中の人が、わが事としてお国自慢してもいいぐらいです。
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朝日の記事の方は、その「大きさ」以外に、「生解説」にも注目しています。
(以下、記事を引用)
日本一、世界一に躍り出た名古屋市科学館のプラネタリウム。だが、本当の売りは他にもある。「生解説」だ。
日本は世界有数のプラネタリウム大国。大小約350館は米国に次ぐ数だ。ただ、その中で生で解説するのは数えるほどしかない。バブル期に自治体が競って建てたこともあり、職員の数が不足。事前につくった番組を流す形式が増え、長期間にわたって知識を蓄える解説者の不足に拍車をかけている面もあるようだ。
名古屋市科学館にいる解説者は25~60歳の男女7人で、全員が学芸員の資格を持つ。1枠50分、録音に頼らずしゃべりっぱなし。天文主幹で自身も解説者の野田学さん(53)は「時間いっぱいの生解説はやめません」と強調する。客層に合わせた話しぶり、アドリブも交えたトーク、そして、観客が星空を体感するしばしの沈黙……ベテラン職員でも毎回緊張するライブだ。
日本プラネタリウム協議会の糸賀富美男さんは市科学館をこう評価する。「ハードだけでなく、ソフト面でも日本のプラネタリウムを引っ張ってくれている存在だ」
ハードもソフトも十分に手を掛けているのは貴重です。特に後者の点は、その地道な努力に心底頭が下がります。
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ところで、現在、名古屋グランパスの新スタジアムの候補地に、科学館のある白川公園の名が挙がっているそうです。交通アクセスの良さが最大のアピールポイントで、スポンサーであるトヨタの意向を受け、河村市長も大乗り気だと仄聞します。
そうなると、今ある科学館や美術館は立ち退きということになるのですが、科学館や美術館へのアクセスの良さが失われることは、あまり関係者の念頭にはないようで、世界第3位のプラネタリウムも、いささか旗色が悪いです。
コメント
_ S.U ― 2016年01月18日 07時39分40秒
_ 玉青 ― 2016年01月19日 20時33分06秒
名古屋市は商売が下手で、せっかく身近な所に「世界一」があるのに、宣伝をほとんどしないので、市民の関心も今ひとつのようです。もったいない話です。
星に誓う結婚式…なかなかファンタジックで良いですね。
まあ、かぐや姫はいささか支障もありますけれど、織姫・彦星なら…と思ったものの、これも疎遠な夫婦が連想されてよろしくないですね。ケフェウスとカシオペアの夫婦も、お妃は驕慢だし、娘は生贄に捧げられるしで、あんまり芳しくありません。なかなか星の世界で夫婦和合は難しいですね。(ふたご座は昔、夫婦の姿で描かれることもあったそうで、強いて言えばその辺りが穏当かも。)
星に誓う結婚式…なかなかファンタジックで良いですね。
まあ、かぐや姫はいささか支障もありますけれど、織姫・彦星なら…と思ったものの、これも疎遠な夫婦が連想されてよろしくないですね。ケフェウスとカシオペアの夫婦も、お妃は驕慢だし、娘は生贄に捧げられるしで、あんまり芳しくありません。なかなか星の世界で夫婦和合は難しいですね。(ふたご座は昔、夫婦の姿で描かれることもあったそうで、強いて言えばその辺りが穏当かも。)
_ S.U ― 2016年01月20日 08時28分12秒
>宣伝をほとんどしない
そういや管見の範囲では、名古屋の人は豪華なのが好きなのに、それを宣伝したり自慢したりしませんね。それは立派なことで、要するに自分の行為を評論したり自慢しているようなことでは本当の「豪気」とはいえないということでしょう。名古屋市長や市職員の方もそれに倣っていらっしゃるのだと推測しますが、もちろん、これは名古屋市民の方々にご判断していただければよいことと存じます。
ところで、理想的な夫婦の星座というのはなかなかないのですね。問題の生け贄にされた王女は、その後勇者と結婚したそうですから、ペルセウスとアンドロメダならまだ成立するかもしれません。まあでもギリシア神話のことですから、そのあと幸せに暮らしたかどうかは保障の限りではありません。
ここで、日本の星の方言にそのものずばり「夫婦星」があったのを思い出して、手近な文献に当たってみたところ、ふたご座の2星(偶然にも!)が「ミョートボシ」と呼ばれている地方があったことがわかりました。同じミョートボシは、やぎ座の2星に当てはめられている例もあるそうです。(ここで、お願いですが、野尻抱影『日本星名事典』で夫婦星/ミョートボシがどの星になっているかお持ちなら見ていただけませんでしょうか。残念ながら私は所持しておりません・・・)
ということで、星の物語に沿ってプラネタリウムの星空から新郎新婦が降りてくるのは成立するのではないかと思います。名古屋で(市立でも民間でも)ぜひ大々的にやっていただいたらどうでしょうか。
そういや管見の範囲では、名古屋の人は豪華なのが好きなのに、それを宣伝したり自慢したりしませんね。それは立派なことで、要するに自分の行為を評論したり自慢しているようなことでは本当の「豪気」とはいえないということでしょう。名古屋市長や市職員の方もそれに倣っていらっしゃるのだと推測しますが、もちろん、これは名古屋市民の方々にご判断していただければよいことと存じます。
ところで、理想的な夫婦の星座というのはなかなかないのですね。問題の生け贄にされた王女は、その後勇者と結婚したそうですから、ペルセウスとアンドロメダならまだ成立するかもしれません。まあでもギリシア神話のことですから、そのあと幸せに暮らしたかどうかは保障の限りではありません。
ここで、日本の星の方言にそのものずばり「夫婦星」があったのを思い出して、手近な文献に当たってみたところ、ふたご座の2星(偶然にも!)が「ミョートボシ」と呼ばれている地方があったことがわかりました。同じミョートボシは、やぎ座の2星に当てはめられている例もあるそうです。(ここで、お願いですが、野尻抱影『日本星名事典』で夫婦星/ミョートボシがどの星になっているかお持ちなら見ていただけませんでしょうか。残念ながら私は所持しておりません・・・)
ということで、星の物語に沿ってプラネタリウムの星空から新郎新婦が降りてくるのは成立するのではないかと思います。名古屋で(市立でも民間でも)ぜひ大々的にやっていただいたらどうでしょうか。
_ 玉青 ― 2016年01月20日 20時22分38秒
星界の夫婦事情を探るべく、さっそく『日本星名辞典』で「みょうとぼし」を探したら、3か所に顔を出していました。1つは七夕の二星、もう1つはS.Uさんが挙げられたやぎ座の角の先(αとβ)、そして3つ目はさそり座の尻尾(λとυ)でした(なお、ふたご座の箇所には出てませんでした)。天上では七夕を除き、どうもひっそりと肩を寄せ合っているご夫婦が多いようですが、ケンカもせず穏やかに過ごしているなら、実に結構なことです。若い方にもその辺を汲んで頂けると、星空結婚式も大いに意義がありそうですね。
_ S.U ― 2016年01月21日 07時42分46秒
早々のお調べありがとうございます。お陰様で、私が参照した内田武志『星の方言と民俗』、桑原昭二『星の和名伝説集・瀬戸内はりまの星』と合わせて4件の当てはめがわかってすっきりしました。
>天上では七夕を除き、どうもひっそりと肩を寄せ合っているご夫婦
「夫婦星」という一般的で基礎的で大上段に振りかぶった名称を、わざわざつつましやかな星の列にあてはめる昔の日本人の感性はすばらしいです。星空結婚式はせっかくのプラネタリウムですから大いに派手にやっていただいたらいいですが、星はやぎ座やさそり座の渋い星を選んでいただくのがより有り難みがありそうですね。
>天上では七夕を除き、どうもひっそりと肩を寄せ合っているご夫婦
「夫婦星」という一般的で基礎的で大上段に振りかぶった名称を、わざわざつつましやかな星の列にあてはめる昔の日本人の感性はすばらしいです。星空結婚式はせっかくのプラネタリウムですから大いに派手にやっていただいたらいいですが、星はやぎ座やさそり座の渋い星を選んでいただくのがより有り難みがありそうですね。
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ところで、名古屋で立派、豪華というと、俗な話になりますが私どもは結婚式くらいしか思い浮かびません。もちろん、人生の門出を豪華に祝うことは有意義なことと存じます。それで、名古屋では、プラネタリウムで式を挙げ、新郎新婦が星空ドームから降りてくるとか新婦が月からやってくるとかの趣向はあるのでしょうか。そしたらどのくらいの費用がかかりそうでしょうか。(ふと思いついただけです。後者はまた勝手に月に帰ることになりかねずよろしくないかもしれません)
サッカースタジアムで世界第3位を取ろうと思うとそれこそ新国立競技場クラスのお金がかかるかもしれませんので、老婆心ながら名古屋市様にはまずはプラネタリウムくらいで高順位を保持してほしいです。