植物のかたち2019年04月08日 22時47分29秒

桜も、はや散りがてに―。
昨日の選挙に行くときは上着もいらないぐらいで、カエデやケヤキがまぶしそうに若葉を広げ、歩道脇にさまざまな野草が花をつけているのを、何か不思議なものを見るような気持ちで眺めながら、ぶらぶら近所の小学校まで歩いて行きました。

人間はさておき、植物というのは実に偉いものだなあ…と思います。
そして純粋に美しいものです。そのことで思い出したことを書きます。

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今から4年前の2015年、愛知県美術館の単館企画で「芸術植物園」という展覧会が開かれました。そのときの自分が何か言ってないか探してみたら、こんな記事を書いていました。

芸術植物園…カテゴリー縦覧「ヴンダーショップ・イベント」編
記事を書いたときはまだ見に行ってなかったのですが、その後無事に出かけて、図録もしっかり買ってきました。


今思い起こすと、あれは相当苦しい展覧会でした。

もちろん意味のあるテーマだとは思うのですが、古今東西、植物を描いた芸術作品は無限にあるので、何をどう配列すれば「植物とアート」という巨大なテーマをコンパクトに展示できるのか、その模範解答を提示できる人は、多分いないでしょう。

件の展覧会も、漢代の器物からルネサンスの本草図、近世の花鳥画から現代美術に至るまで、まさに「総花的」展示で、「美」という観点に限っても、植物と人間のかかわりは実に長く且つ深いものであることを示していましたが、同時にかなり混沌とした印象を与えるものでした。

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そうした中で、私の目を強く引きつけたアーティストがいます。
ドイツのカール・ブロスフェルト(Karl Blossfeldt、1865-1932)という人です。

ウィキペディアには、「ドイツの植物学者、写真家、教師」と紹介されていますが、彼が専門の植物学者だった事実はありません(「植物愛好家」という意味で「ボタニスト」ではあったかもしれません)。そして、その写真術も独学です。最初は鉄の工芸家として出発し、建築装飾とデザインを学び、ベルリン王立工芸美術館付属学校で、「生きた植物に基づく造形」という科目で、長く教鞭をとった…という経歴の人です。

まあ普通だったら、あまり注目を浴びることなく、坦々と人生を送ったと思うんですが、ふとしたことで、彼は大いに世間の注目を浴びます。それが彼の植物写真でした。彼は担当教科のネタとして、長年にわたって身近な植物の写真を撮りためていたのですが、その幾枚かがベルリンの画廊に展示されて評判を呼び、写真集『芸術の原型 Urformen der Kunst』(1928)が刊行されたことで、その名は不朽のものになったのです。

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…というわけで、植物のかたちの秘密を追って『芸術の原型』の中身を見に行きます。
もっとも、ブロスフェルトの写真はネットでも簡単に見ることができますが、その書誌がかなり込み入っているので、まずそのことを自分用にメモしておきます。

(この項つづく)

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