『アマチュア望遠鏡愛好家の手引』より…英国と米国2008年02月05日 21時54分20秒

■以前の記事 http://mononoke.asablo.jp/blog/2007/12/30/2537099

この本にようやく目を通しました。著者のギブソンは、なかなか世話好きな人のようで、入門者向けの細かい助言のあれこれが面白かったです。そのことはいずれまた書くでしょう。

繰り返しになりますが、この本が出たのは1894年。著者はアメリカ人で、その経歴はよく分かりませんが、1893年付けの前書きはワシントンで書かれています。1894年といえば、日本では明治27年、日清戦争で国中がワーワー騒がしかった頃ですね。

さて、ここで問題。当時、イギリスとアメリカのアマチュア天文界には、ある大きな違いがありましたが、それは何でしょう…?

 ★

イギリスとアメリカ―社会構造は違っても、ハイカルチャーの面では似たりよったりと思っていたのですが、この本を読んで「ああそうか」と納得したことがあります。

>> 答は、アメリカではまだ反射望遠鏡が使われていなかったことです。

ギブソンはこう書いています。

「反射望遠鏡については叙述を控えた。この機材はアメリカではほとんど知られていないからである。もっとも、将来は好んで用いられることは間違いない。イギリスでは― 銀メッキガラス鏡が発明されて以来特に ―同口径の屈折望遠鏡に較べて安価であるため、反射望遠鏡こそアマチュア向けの望遠鏡だといっても過言ではない状態が続いている。今後本書の改訂版が出る機会があれば、必ずや反射望遠鏡に紙幅を割くことになろう。」

アメリカでは「小口径屈折がアマチュアの友」という時代が、19世紀末になっても継続していました。そのことを、はっきり指摘した同時代の文献として、これはなかなか貴重だと思います。

そして、この屈折望遠鏡優位の時代は、この後も容易に終わることなく、アメリカに反射望遠鏡ブームが訪れるのは、さらに1世代が経過した後だった…と言えば、ピンと来る人もいるでしょう。

(この項つづく)

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