月星合戦2016年11月19日 10時31分42秒

『武州治乱記』、文明十年(1478)八月の条は、古河公方配下の成田顕泰が、扇谷上杉家配下の忍胤継と、当時混乱を極めた関東の覇権をめぐって、大利根の原野で激突した「星川合戦」について記しています。(その覇者・成田氏は、この地に堅固な忍城を築き、その裔・成田長親をモデルにしたのが、あの小説『のぼうの城』。)

ときに、この「星川合戦」の「星川」というのは、すなわち今の「忍川」のことで、「忍(おし)」という姓も、元来は「星」から転じたものです。星氏は千葉氏の流れを汲む氏族ですから、千葉氏一門の習いとして、その紋所は「星紋」でした(星氏ならびに忍氏が用いたのは、主に七曜紋)。

対する成田氏は、「月紋」(月に三つ引両)を用い、月と星の旗指物が一面に入り乱れた「星川合戦」は、別名「月星合戦」とも称され、血なまぐさい中にも、美々しい合戦の状景を今に彷彿とさせます(その様は、行田市郷土博物館が所蔵する「星川合戦図絵巻」に生きいきと描かれています)。

   ★

…というのは、たった今思いつきで書いた、純然たるフィクションです。
そもそも『武州治乱記』などという本は存在しません。

なぜそんな埒もないことをしたかといえば、ひとえに「月星合戦」という言葉を使いたかったからです。実際にそういう合戦があればよかったのですが、なかったので、今作りました。

   ★

さて、これが今日の主役。本当の「月星合戦」の主戦場です。

(ボードの大きさは約20cm角)

「ティク・タク・トゥ」、日本でいう「まるばつゲーム」。
この盤上で、黄色い月と青い星が死力を尽くした大一番(と言うほどでもありませんが)を演じるのです。

売ってくれたのは、アンティークショップというよりも、単なるリサイクルショップで、これもわりと新しい品のように見えますが、でも、これで遊んだ子供たちも、今ではいい大人でしょう。


メーカー名の記載は特にありません。おそらくは売り手の住む、米バーモント州の地元で作られた木工品じゃないでしょうか。ボードは合板ではなく一枚板なので、結構重いです。


戦国絵巻もいいですが、月と星の合戦に流血は似合いません。
ときどき涼しい火花がパチッと飛ぶぐらいが、ちょうど良いです。


【閑語】

安倍晋三氏は、ひょっとして先祖の長州人の血が騒ぎ、かの人物と刺し違える覚悟でニューヨークに向かったのかな…と思ったら、どうもそんなことはなくて、ゴルフクラブをプレゼントして、ニコニコ握手するだけで終わったようでした。
「ふたりはゴルフが好きなんだな」ということは得心できましたが、他のことは皆目わからず、煙に巻かれた思いです。

コメント

_ S.U ― 2016年11月20日 08時06分23秒

>月星合戦
 戦国時代前半の関東の歴史についてはほとんど何も知らないので、今回はあっさりだまされました。この意趣返しはいつかきっと(笑)。

>安倍晋三氏
 今回、トランプ氏は、側近や家族から人事を始めようとしているところだったので、自分もその仲間に入れてもらおうという属国根性が出たものと思いました。(「飼い犬」という言葉まで浮かびましたが、現時点でここまで言うのはやめておきます)。

_ 玉青 ― 2016年11月21日 07時21分25秒

(二重投稿のようでしたので、1件削除しました。)

>意趣返し

やや、これは剣呑ですね。抜かりなく防備に努めねば。(笑)

ときに、さっき「月星合戦」で検索したら、早くも上の記事がトップ表示されていて、これは将来何か間違いが起きなければいいが…とちょっと心配です。

そしてまた同じ検索結果を眺めていたら、少し下の方に、

「ブラジャー販売合戦 伝説の“四条河原の決戦”」
http://diamond.jp/articles/-/104162

というのがあって、「何じゃこりゃ?」と思ってリンク先を読みに行きました。
すると、昭和25年、当時新興だったワコール社(当時の和江商事)が、京都高島屋への商品納入権をめぐって、ライバル社と店頭でブラジャーの販売合戦を繰り広げ、勝ちを収めた事実の顛末が述べられていました。(店頭で販売合戦をして、勝った方を採用するなんて、少年マンガの世界だけかと思ったら、実際にあったんですね。)

で、ワコールのライバル社というのが、「青星社」。その暗合に軽い驚きを感じました(というか、だからこそ検索にかかったのかも)。
ワコールの社章が月印だったら、なお良かったですが、でも物が物だけに、そんな「月星合戦」があっても記事には引用しにくいです。これはやっぱり偽史の出番ということになるのでしょう。

_ S.U ― 2016年11月23日 07時57分13秒

>ブラジャー販売合戦
 ワコールの初代社長塚本氏は京都では名物人物だったので、これは戦後世代のマンガ家のほうがこの事実に倣ったのかもしれないと思いました。「ブラジャー販売合戦」は存じませんでしたがそれで思い出したのは、当時革新知事の総帥格だった蜷川虎三京都府知事が塚本社長と仲が悪く「パンツ屋のおやじ」とか「女のふんどし屋」と罵っていて、塚本氏も自宅に「虎」の敷皮を引いて客に踏ませたという逸話でした。勝負好きの人だったのでしょうね。女子陸上部を作って日本最強クラスにしました。でも月星合戦と関係はないですね。

 「星氏」といえば、奥州の星氏が伊達政宗と合戦をしていないかと思いまして、それなら月星合戦ではないかと調べて見ました。残念ながら、伊達政宗は奥州制覇後は秀吉に対して煮え切らない態度を示していて星氏の滅亡に対しても明瞭な貢献があるかどうかはわかりませんでした。何で伊達政宗が「月」かというと、新月の兜を被っていますからね。(意趣返しとしては不発でした)

_ 玉青 ― 2016年11月23日 11時59分56秒

名だたる堅城抜くべからず、ですよ。(笑)

ときに京都の選挙はすごいらしいですね。
都の人の「いけず」が入り乱れて、ずいぶんえげつないことになっていると聞きました。面白おかしく話をふくらませているのかなとも思いましたが、いや現実はもっとすごいよ…と聞いて、京都はやっぱり恐ろしいところだと思いました。

_ S.U ― 2016年11月23日 21時23分08秒

>京都はやっぱり恐ろしいところ
 どうなんでしょうねぇ。私は「いけず」な洛中人ではないので、ノーコメントということにしておきます。

 それは別にして かつての京都府知事選挙は面白かったです。選挙ごとに自民党から共産党まで、また各種業界団体、労働組合入り乱れて、何十何百あるかしれない団体が、蜷川派についたり反蜷川になったり動員戦が行われたものです。浮動票などというものは問題になりませんでした。小さな村ならともかく京都府全体がそうなるという今日から考えると異常な事態でしたが、活発な選挙は民主主義の精華ですから、ああいう選挙を現在でもしてほしいというのが、民主主義に対する私の一つの原点になっています。

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