お知らせ ― 2015年05月14日 07時08分20秒
「腑分け」の途中ですが、急ぎの仕事が入ったので、数日間臨時休業します。
仏は不殺生を説き給はずや ― 2015年05月15日 07時02分31秒
仕事に優先することもあるので書きます。
今の流れを俯瞰すると、遠からず徴兵制の議論が出ることは確実と思います。
少なくとも、現首相の周囲にはそういう空気が濃密に流れているのを感じます。
それは冷静な政治判断というよりも、何か暗い情念に突き動かされているようにも見受けられます。
今はまだ現実味が感じられませんが、それを言ったら、今回の「安全保障関連法案」なるものだって、少し前までまったく現実味の感じられないものでした。
自分の子供や(まだ見ぬ)孫が、鉄砲を手にして人を殺す、殺される。
まったく恐ろしいことです。そして愚かしいことです。
私はきっぱりと反対です。
(杞憂かもしれません。ぜひ杞憂であることを願います。)
今の流れを俯瞰すると、遠からず徴兵制の議論が出ることは確実と思います。
少なくとも、現首相の周囲にはそういう空気が濃密に流れているのを感じます。
それは冷静な政治判断というよりも、何か暗い情念に突き動かされているようにも見受けられます。
今はまだ現実味が感じられませんが、それを言ったら、今回の「安全保障関連法案」なるものだって、少し前までまったく現実味の感じられないものでした。
自分の子供や(まだ見ぬ)孫が、鉄砲を手にして人を殺す、殺される。
まったく恐ろしいことです。そして愚かしいことです。
私はきっぱりと反対です。
(杞憂かもしれません。ぜひ杞憂であることを願います。)
飛び出す解剖絵本 ― 2015年05月17日 12時02分55秒
さて、急ぎの仕事も一段落したので、落ち着かぬ気分の中でも、強いて呑気な記事を続けます。
★
前回登場した、クロムリンクの解剖図集の中身を一瞥します。
図版は砂目石版で、銅版の鮮明さはありません。判型もB5 判よりちょっと大きいぐらいの、図譜としては小ぶりなものです。解剖図としては廉価版に属するものでしょう。
解剖図集というぐらいですから、こういう当たり前の図も載っているのですが、この本の特徴は、いろいろギミックがあって、仕掛け絵本になっていることです。
たとえば、この頭蓋と脊椎の絵は、
めくり上げると中から脳脊髄が出てきて、
さらに脳髄を二つに断ち割ることができます。
眼球の仕組みも、平面的な図ばかりでなく、
こういうのが
こうなったりして、その構造の理解をたすけてくれます。
こういうポップアップ式の人体絵本は今もありますし、20世紀の初頭には教育目的でずいぶんたくさん作られましたが、1841年という比較的古い年代にも、そうした例があることを知って、軽い驚きがありました。
そもそも仕掛け絵本の歴史はずいぶんと古く、中世にも先例があるそうです。
ことに書籍が大衆化した19世紀には、児童書を中心に大いに流行し、そうした嗜好が解剖図集にも波及していたことを、この本は教えてくれます。
ことに書籍が大衆化した19世紀には、児童書を中心に大いに流行し、そうした嗜好が解剖図集にも波及していたことを、この本は教えてくれます。
この本には、他にもたとえば腸を持ち上げて腸間膜を観察する頁があったり、
大口を開けた顔が上下するにつれて、食道が伸びたり縮んだりするという、何だかよく分からない仕掛けもあります。
★
解剖古書は熱心なコレクターも多く、私も比較解剖学の話題などは、大いに興味をそそられるのですが、個人的に人体解剖の話題はどうも苦手です。知らず知らずのうちに、対象に感情移入してしまうからでしょう。(そのわりに人体模型が好きなのは、彼らにはカラッと陽気な感じがあるからですが、この辺はちょっと説明が難しいです。)
生薬・秘薬・毒薬(1)…カテゴリー縦覧:医療・薬学編 ― 2015年05月19日 06時37分31秒
カテゴリー縦覧の旅も道半ばを過ぎて、遠くに終着点が見えてきました。
ここまで書いてきて、改めて各カテゴリーを見直すと、記事数がものすごくアンバランスなことに気づきます。今日現在でいうと、一番多いのが「天文古書」の304で、次いで「絵葉書」の239あたりが横綱クラス。一方少ないのは、(企画倒れの観のある「便利情報」を除けば)「木星」の8個、そして今日のテーマである「医療・薬学」の9個というのが続きます。
「医療・薬学」については、前回の人体解剖の話題と同様、何となく暗くぬめっとした感じがダメで、もっといえば、人間は文学の対象ではあっても、理科趣味の対象とはならない…という、私自身の抜きがたい偏見のせいでもあります。
ただ、一口に「医療・薬学」といっても、両者の肌触りはずいぶん違います。
薬学はその出自を考えれば、むしろ植物学に近い学問ですし(というか、植物学が薬学から派生したのでしょう)、その魔術的な雰囲気を面白く思う心もあって、一時はけっこうのめり込んでいました。
薬学はその出自を考えれば、むしろ植物学に近い学問ですし(というか、植物学が薬学から派生したのでしょう)、その魔術的な雰囲気を面白く思う心もあって、一時はけっこうのめり込んでいました。
過去の記事でいうと、下の文章がその辺りの事情を伝えています。
★
で、上の記事に出てきた生薬標本というのはこれです。
キーボードと比べると大体お分かりでしょうが、22×24センチほどの菓子折りサイズの箱入りセット。ラベルが朽ちかけていますが「第五改正準拠/局方生薬標本/京都市車屋町二條/中川安商店学術部」とあります。
「中川安(なかがわやす)商店」というのは、ウィキペディアにも項目立てされている、医療器材・薬品一般を扱う老舗で、明治39年(1906)の創業。現在はアルフレッサ(株)というハイカラな名称になっています。
国が薬品の標準規格を定めた「日本薬局方」は、明治19年(1886)以来、16次の改正を経て現在に至りますが、ここに出てくる「第五改正」とは、昭和14年(1939)に行われたものを指します。
箱の蓋の裏側には、その局方生薬一覧が載っています。
この標本セットは、それを網羅したもので、中には
「印度大麻」とか「阿片」とかあって一瞬ドキッとしますが、こうした麻薬類は例外で、標本セットから除外されています。でもそれ以外は、劇薬扱いのものも含まれているので、薬学をめぐる怪しい雰囲気は十分そなわっています。
以下、この古風な(そして実際古い)生薬標本の表情を眺めます。
★
ときに、「薬局方」という言葉を調べていたら、それは英語で「pharmacopoeia」という、いかにも詰屈なスペルの単語で表現されることを知りました(ファーマコピーアと発音するらしい)。
そして、ネット辞書のWeblioには「It has not yet found its way either into the pharmacopoeia or into the literature of toxicology. (薬局方にも毒物学の文献にも出たことがない。)」という例文が、さりげなくシャーロック・ホームズの『悪魔の足』から引用されていて、「おお」と思いました。
この作品は、「悪魔の足の根(Radix pedis diaboli)」という、アフリカにのみ存在する毒物を使用することで、警察の捜査を逃れるというのがトリックの核になっていて、薬物、殺人、アフリカ、探偵…そんなイメージが脳内でかもされ、私の生薬イメージにいっそう奇怪な陰影が生じたのでした。
(この項つづく)
生薬・秘薬・毒薬(2)…カテゴリー縦覧:医療・薬学編 ― 2015年05月20日 07時14分01秒
さて、生薬の箱の中身です。
蓋を開けると、さらにボール紙製の箱があって、1から7までの番号シールが貼られています。そのキッチリ感も大層よくて、様々な大きさの箱が、この番号の順に化粧箱に入れていくと、最後にピタッと収まります。
手前の6番、7番の箱には、可愛らしい小壜が上下2段になってぎっしり。
中層の3番、4番、5番の箱には、スマートな中壜が、
いちばん下の1番、2番の箱には、ズシッとした大壜が並んでいます。
次々に現れる秘薬、生薬。
個々の壜の表情も、いかにも妖しの気配です。
No.74の扁平なのはホミカ、局方名はSemen Strychini。
生薬の本を参照すると、植物名はStrychnos nux Vomica L.で、産地は東インド。漢名は番木鼈または馬銭子。その味は頗る苦く、健胃薬として用いられる一方、毒性の強いストリキニーネの原料ともなるため、局方上、劇薬扱いです。
生薬の本を参照すると、植物名はStrychnos nux Vomica L.で、産地は東インド。漢名は番木鼈または馬銭子。その味は頗る苦く、健胃薬として用いられる一方、毒性の強いストリキニーネの原料ともなるため、局方上、劇薬扱いです。
その隣の不定形なNo.12は五倍子(‘ごばいし’又は‘ふし’)。局方名は Galla。
ウルシの仲間であるヌルデの木に、アリマキの一種が寄生することで出来る「虫こぶ」を薬に用いるものです。書物には「味極メテ収斂性ナリ」とありますが、主成分はタンニンで、ものすごく渋いらしいです。それにしても、こんな妙ちきりんなものにまで有用性を見出すとは、人間の探求心の何と旺盛なことか。
ウルシの仲間であるヌルデの木に、アリマキの一種が寄生することで出来る「虫こぶ」を薬に用いるものです。書物には「味極メテ収斂性ナリ」とありますが、主成分はタンニンで、ものすごく渋いらしいです。それにしても、こんな妙ちきりんなものにまで有用性を見出すとは、人間の探求心の何と旺盛なことか。
小壜たちもそれぞれに、それぞれの表情。
右端に見えるNo.89の鉱物状のものは、サンダラック(Sandaraca)。アフリカ産の松柏類の一種からとれる樹脂で、特に薬効はありませんが、硬膏の原料とされます。
なお、番号シールの代わりに直接名称が記載された標本壜は、局方生薬以外のものです。
右端に見えるNo.89の鉱物状のものは、サンダラック(Sandaraca)。アフリカ産の松柏類の一種からとれる樹脂で、特に薬効はありませんが、硬膏の原料とされます。
なお、番号シールの代わりに直接名称が記載された標本壜は、局方生薬以外のものです。
どうですか、この「ズラッと感」。
(画像再掲)
東大の生薬標本↑と較べるのは僭越ですが、でも「驚異の部屋」にかける気概は、おさおさ劣るものではありません。(それに、時代がかって見える東大のセットも、震災後の大正末期~昭和戦前に購入されたものらしく、歴史性においても、そう大きな隔たりはありません。)
5月の星空…マンチェスターの街から ― 2015年05月21日 20時59分27秒
月替わりでイギリスの児童用星図を見るシリーズ。
今回で5回目ですが、こういうのを続けていると、本当に時の経つのは早いなと実感します。
今回で5回目ですが、こういうのを続けていると、本当に時の経つのは早いなと実感します。
さて、5月の星空はイングランド北西部にある、イギリス第2の都市・マンチェスターから見上げます。
「5月の星座。この星図で皆さんは5月中旬から6月中旬までの星を学ぶことができます。皆さんは今、マンチェスターの街に立ち、左手に市庁舎がそびえるアルバート広場から南の空を眺めているところです。頭上高く「りゅう座」のドラゴンが横たわり、その尻尾が指極星〔=北極星を指し示す北斗七星の「升」の先の2星〕と北極星の間に長々と伸びています。」
獅子(LEO)は西に傾きつつあり、乙女(VIRGO)の後方から、天秤(LIBRA)が追いすがってきました。そこに記された、「ズベン・エル・ゲヌビ(南の爪)」と「ズベン・エス・カマリ(北の爪※)」という異国情緒満点の星の名は、さらに後に続く、さそり座の左右のハサミに見立てたものだそうで、いかにも夏の入口を感じさせます。
★
5月は-日本人にとっての8月の如く-イギリスの人にとって、戦争にまつわる記憶の多い月で、星図の隣頁には、1945年5月8日、ドイツ降伏に伴うヨーロッパ戦勝を祝う大群衆(左上)や、1941年5月10日、ドイツの空爆を受けた下院議院の惨状(右下)を伝える写真が掲載されています。
ちなみに、この児童用百科事典によれば、今日5月21日は30年戦争の幕開けの日(1618年)であり、サマータイム法の施行日(1916年)だそうです。
(※)星図には「ズベン・エル・カマリ Zuben el Chamali」と書かれていますが、これは誤記ではなく、確かにそう綴られることもある由。
極微のイエローページ…カテゴリー縦覧:物理・化学・工学編 ― 2015年05月22日 21時48分51秒
妖しの気配は、古めかしい生薬の壜に漂うばかりではありません。
それはまた、未知の世界を錐(きり)のようにこじ開けていく先端科学の周辺にも、同様に濃いです。少なくとも門外漢にとってはそうです。
それはまた、未知の世界を錐(きり)のようにこじ開けていく先端科学の周辺にも、同様に濃いです。少なくとも門外漢にとってはそうです。
スキッとした白い表紙。そこに「Journal of Physics G」、「Review of Particle Physics」の赤い文字が目に鮮やかです。
(Journal of Physics は分野別にA(数学・理論)、B(原子・分子・光物性)、C(固体)…とラベリングされていて、Gは「核・素粒子」をテーマにしたシリーズです。)
そして、この厚さ。
堂々1422ページ、電話帳サイズのズシッとくる冊子です。
(頭上から落ちてきたら、死を免れないでしょう。)
堂々1422ページ、電話帳サイズのズシッとくる冊子です。
(頭上から落ちてきたら、死を免れないでしょう。)
中身は徹頭徹尾分かりません。
たしかに、これが既知の素粒子のデータブックであり、世界中の研究者・研究機関が、最新の装置を使って得た測定値(質量、電荷など)を列挙している…ということは辛うじて分かります。しかし、それ以上のことは茫洋と霞んでいます。
たしかに、これが既知の素粒子のデータブックであり、世界中の研究者・研究機関が、最新の装置を使って得た測定値(質量、電荷など)を列挙している…ということは辛うじて分かります。しかし、それ以上のことは茫洋と霞んでいます。
この冊子が、未解読の奇書「ヴォイニッチ手稿」と何ほど違うか?と問われれば、私には両者の違いよりも、類似の方がより強く感じられる…と告白せざるを得ません。
ゲージ粒子、レプトン、クォーク、メソン、バリオン…
素粒子のグループ別に、延々と続く数値と数式、そして謎めいた単語。
まさに「読むドラッグ」という感じです。
素粒子のグループ別に、延々と続く数値と数式、そして謎めいた単語。
まさに「読むドラッグ」という感じです。
しかし、これが魔導書なんぞでなしに、「実験と観察」に基づく科学の成果である証拠は、その記述そのものの中に、はっきり顔を出しています。
おなじみの「電子」の項。
19世紀チックな電子なんて、もう全て白日の下にあって、目新しいことなんて何もないんじゃないか…というと、そんなことは全然なくて、その基本量である質量にしても、その「正しい値」を人類はいまだに知りません。
19世紀チックな電子なんて、もう全て白日の下にあって、目新しいことなんて何もないんじゃないか…というと、そんなことは全然なくて、その基本量である質量にしても、その「正しい値」を人類はいまだに知りません。
この2010年版のデータブックには、1987年に発表された測定値
548.579903±0.000013 (単位は 統一原子質量単位(u) × 10のマイナス6乗)
から、2008年発表の最良の値
548.57990943±0.00000023
までが種々列挙されています。この誤差範囲の縮小こそ、人類が鋼の意志で、絶えざる検証作業を続けてきた成果です。
548.579903±0.000013 (単位は 統一原子質量単位(u) × 10のマイナス6乗)
から、2008年発表の最良の値
548.57990943±0.00000023
までが種々列挙されています。この誤差範囲の縮小こそ、人類が鋼の意志で、絶えざる検証作業を続けてきた成果です。
そして、今やこの最良の値すら乗り越えて、最新のデータブックには、2012年に発表された以下の値が記されています(http://pdg.lbl.gov/encoder_listings/s003.pdf)。
548.57990946±0.00000022
この世界の真実の姿を求める、息づまるようなドラマが、その背後にはあるのでしょう。
うーむ、分からない。
分からないけれども、これらもまた素粒子と人間が繰り広げるドラマの一コマに違いありません。
分からないけれども、これらもまた素粒子と人間が繰り広げるドラマの一コマに違いありません。
★
私にとって分不相応な(まったく分不相応です)この冊子は、常連コメンテーターのS.Uさんから、先年恵与していただきました(どうもありがとうございました)。
これはある意味「星図帳」と対になるものだと思います。
何となれば、そこには<目に見える世界の全て>が書かれているからです。
何となれば、そこには<目に見える世界の全て>が書かれているからです。
マテマティ家の紋章…カテゴリー縦覧:数学・図形編 ― 2015年05月23日 16時25分10秒
さて、カテゴリー縦覧はさらに進んで数学へ。
しかし、数学の話題になると、こんなふうにすぐ早蕨の萌えいづる春となって、私の理解を超えてしまいます。ですから数学の話題といっても、このブログでは、せいぜいが四則演算止まりです。
キーボードの隅にちょこんと置かれたのは、
極小のピンバッジ。その大きさは小指の爪ほどしかありません。
しかし、四則の演算記号を紋章風にあしらったデザインは秀逸で、最初見たとき、安野光雅画伯の数学絵本の表紙絵のようだと思いました。
しかし、四則の演算記号を紋章風にあしらったデザインは秀逸で、最初見たとき、安野光雅画伯の数学絵本の表紙絵のようだと思いました。
このピンバッジ、より正確に言うと「ラペルピン」という奴で、いわゆる襟章です。
上部に書かれた「COMPTOMETER」とは、アメリカで1880年代に生まれた機械式計算機の名称で、熟練したオペレーターの手にかかると、日本のソロバン同様、素晴らしい速さで加減乗除をこなしたものだそうです。コンプトメーターは、その高い実用性から、戦後も長いこと現役であり続け、1970年代まで製造が続けられたとか。
この襟章は、その熟練オペレーターを賞するためにメーカーが授与したもので、1920年代頃のものと聞きました。
本来はゴールドのチェーンがあしらわれていたようですが、今は失われています。
★
ところで数学記号の由来は、諸説入り乱れていて、中にはずいぶんと怪し気な説も耳にします。まあ由来はともかく、その初出年代については、以下のページが信頼できそうです。
■Table of mathematical symbols by introduction date(Wikipedia)
http://en.wikipedia.org/wiki/Table_of_mathematical_symbols_by_introduction_date
http://en.wikipedia.org/wiki/Table_of_mathematical_symbols_by_introduction_date
これによると、四則に関していちばん早く登場したのは、「+」の1360年頃。
以下、「-」1489年、「×」1618年、「÷」1659年となっているので、仮に上の紋章が実在するとしても、17世紀後半以降のものということになります。
以下、「-」1489年、「×」1618年、「÷」1659年となっているので、仮に上の紋章が実在するとしても、17世紀後半以降のものということになります。
ストックブックの中の大空…カテゴリー縦覧:気象編 ― 2015年05月24日 20時14分16秒
BARIGO社のこと ― 2015年05月25日 22時06分50秒
昨日の「気象編」に、本当はこのバリゴ社の気象計を載せようと思いました。
1台で気圧、気温、湿度を表示してくれる芸達者。
透明ドームの中にそれをコンパクトに収めた手際も見事ですし、その機械美の見せ方もうまいですね。
この品は買ってからもう20年以上になります。
私が理科室風書斎を志した当初から、ずっとそばにいてくれる、心優しき友。
当時は通販誌の定番で、今もステーショナリー・ショップの店頭や、オンラインで盛んに売られているので、むしろありふれた存在かもしれませんが、こうして見ると、やっぱり美しいなと思います。
私が理科室風書斎を志した当初から、ずっとそばにいてくれる、心優しき友。
当時は通販誌の定番で、今もステーショナリー・ショップの店頭や、オンラインで盛んに売られているので、むしろありふれた存在かもしれませんが、こうして見ると、やっぱり美しいなと思います。
★
ただ、記事として取り上げるからには、もうちょっと詳しい紹介をしたいと思いました。しかし、ネット上を徘徊しても、BARIGO社の歴史は何となく霞がかかっているのを感じます。
いろいろ見て回ると、その創業年は戦後の1949年のようです。
ならば、そう老舗老舗というほど老舗でもないんじゃないか…と思いましたが、でも、1949年は現在の会社組織になった年で、同社にはさらに前史があり、1926年が真の創業年だそうです。
ならば、そう老舗老舗というほど老舗でもないんじゃないか…と思いましたが、でも、1949年は現在の会社組織になった年で、同社にはさらに前史があり、1926年が真の創業年だそうです。
で、それらを総合すると、以下のような紹介文になります(Amazonの関連ページの記述を一部改変)。
「バリゴ社は1926年にドイツ・シュツットガルト郊外で創業されたドイツの気圧計メーカー。社名はBArometer(バロメーター)と創設者のRIchard GOesの名前にちなんで名付けられた。1949年にスイス国境に近いシュヴァルツヴァルト(黒い森)の中にある町ドイツ時計産業の中心地、フィリンゲン-シュヴェニンゲンに移り高品質な製品を世に送り続けている。」
今ある日本語による紹介文はみな大同小異ですが(コピペなのでしょう)、そのソースが今ひとつはっきりしません。
より確かな事実を求めて、バリゴ社の公式サイトで「About Us」のページを見ても、そこには自社の歴史が全く書かれていません。これは「老舗」を以て任じる会社として、はなはだ異例なことです。
■BARIGO社公式サイト http://www.barigo.de/index_en.html
そもそも、創設者とされるRichard Goes(リヒャルト・ゲーズと読むのか?)とは誰なのか? どんな経歴の持ち主であり、1949年の会社設立時にも存命だったのか? 検索してもよく分かりませんでした。
★
それでもしつこく探したら、やや詳しい記述が以下にありました(ドイツの気象機器研究家がまとめたサイトのようです)。
■BARIGO – Schwenningen:Freund alter Wetterinstrumente
http://www.freunde-alter-wetterinstrumente.de/14bargal11.htm
http://www.freunde-alter-wetterinstrumente.de/14bargal11.htm
それによると、バリゴ社の創設は(1926年ではなく)1925年だと書かれています。場所はエスリンゲンで、確かにシュツットガルトの郊外。そして、創設者のRichard Goes の名が、後に社名に取り入れられたのは、事実その通りのようです。
1949年の会社創設時のトップは、Mehne、Hayer、 Müllerの3人で、Goes氏は当時すでにいなかったように読めます。そして、バリゴ社が大いに発展したのは、輸出ブームで沸いた1950年代後半以降のことである…というようなことも書かれています。
この記述のソースは、1999年に同社が発行したパンフレットだそうで、日本語の情報も、その辺りが元になっているのだと思います。おそらく、これ以上詳しい情報は、今に至るまで公になっていないのでしょう。創業時はごくちっぽけな会社だったので、語るに足ることがないのか、あるいは語るに語れぬ暗い戦争の影がそこに差しているのか…。
気にはなります。
が、この製品はそうしたこととは無関係に、やっぱり美しいなと思います。
が、この製品はそうしたこととは無関係に、やっぱり美しいなと思います。
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