マッチをくわえた「月の男」(その3) ― 2017年11月07日 21時09分12秒
銅の月、銀の月とくれば、次は金の月の出番です。
もちろん本当のゴールドではなく、金色に光る真鍮に過ぎませんが…
今度の月は、丸まるとした満月。
これまた頭部がふたになっていて、そこにマッチ擦り用のギザギザがあります。
ときに、1枚目の画像と見比べていただきたいですが、最初の写真ではにこやかに笑っていた月が、こうしてうつむくと、何だか悲し気な表情に見えます。
これは能面もそうで、能の世界では、こうした所作を、「面(おもて)を曇らす」と呼ぶようです(逆に仰向け気味にする所作は、「面を照らす」)。無表情の代名詞の能面ですが、こんな風にちょっと角度を変えるだけで、そこに千変万化の表情が生まれます。
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さらにまた、この月のヴェスタは、いっそう劇的な変化も見せます。
こちらはまるで文楽や京劇の早変わりのようです。
上の月をくるっと裏返したところ。
昨日の銀の月と同様、この月も裏と表で、Happy face と Sad face がくるくる入れ替わります。
ひょっとしてですが、昨日の「笑顔の三日月」と「泣き顔の有明月」から類推するに、笑顔が満月で、泣き顔が新月なのかも。でも、上り調子はむしろ新月で、これから下りに向かうのが満月だから、裏表逆かもしれんぞ…とか、つい月に人生を重ねて見てしまいます。
泣く月と、
笑う月。
まあ、事の真偽は、月たち自身に話し合いで決めてもらいましょう。
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実に表情豊かな月のヴェスタ・ケース。
すでに実用性を失った品だけに、いっそうそこには雅味が感じられます。
月光派としては、常に懐中に忍ばせ、月無き夜にはそっと空にかざして心を慰め、一人でグラスを傾ける折には、そっとカウンターに置いて、気の利いた話し相手を務めてもらうのがいいかもしれませんね。
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