五十路プラネタリウムの快気炎2009年11月18日 19時51分35秒

写真は、昨日の夕刊。
ヨレヨレになった紙面に、黒々としたプラネタリウムが写っています。

朝日新聞の夕刊には、毎週火曜日に「読者が決める日本一の○○」という連載があって、昨日のテーマはプラネタリウムでした。

同紙の読者アンケートの結果、見事1位となったのが、兵庫県の明石市立天文科学館。以下、ランキングを資料として転記しておきます。(ただ転記するのも芸がないので、下段に<プラネタリウムの開設年、現行機種>を補足しておきます。ただし、ネットのチラ見情報なので、もしミスがあったらごめんなさい。)

1位 明石市立天文科学館(兵庫) 1811人
   (1960年、カール・ツァイス・イエナ23/3型)
2位 大阪市立科学館(大阪) 1266人
   (1937年(旧・大阪市立電気科学館)、ミノルタINFINIUMα)
3位 秋田ふるさと村星空探検館スペーシア(秋田) 1019人
   (1994年、ミノルタINFINIUMα)
4位 サイエンスドーム八王子(東京) 974人
   (1989年、ミノルタ ジェミニスターⅢ)
5位 仙台市天文台(宮城) 893人
   (1968年、五藤GM II-SPACE)
6位 名古屋市科学館(愛知) 738人
   (1962年、ツァイスⅣ→2010年、コニカミノルタの新鋭機に置換予定)
7位 府中市郷土の森博物館(東京) 734人
   (1987年、五藤GL-AT)
8位 さいたま市宇宙劇場(埼玉) 609人
   (1987年(旧・大宮市宇宙劇場)、ミノルタINFINIUM)
9位 はまぎんこども宇宙科学館(神奈川) 512人
   (1984年、五藤S-Helios)
10位 鹿児島市立科学館 (鹿児島) 489人
   (1990年、五藤CHIRON(ケイロン))

こうして見ると、国内の主流は今や完全に国産機ですね。ここまで来るには、各メーカーの不断の努力と精進があったことでしょう。

そんな中、戦前からの名門ツァイスの名を負う明石の投影機は、「国内の現役機では最古参、大型機としては世界で5番目の長寿機」として、紙面では紹介されています。「プラネタリウムはやっぱりこうでなくちゃ」と思わせる、硬派なシルエットにしびれます。

カール・ツァイス社は、戦後、東西ドイツ分裂のあおりを受けて、東独のイエナ・西独のオーベルコッヘンに分離して、それぞれがプラネタリウムの製造を続けました。明石のイエナ23/3型機は、東のツァイス社が作った戦後第1世代の機種で、片や名古屋市科学館に納入されたⅣ型機は、西のツァイス社が作った戦後2番目の機種。この2台が、いわば日本のツァイスの東西両横綱ですが、西の横綱は近々引退するらしいので、今後は東の独走態勢に入りそうです。ぜひ頑張って、オールド・プラネタリウムの余香を永く伝えてほしいものです。

■参考: 伊東昌市(著) 『地上に星空を―プラネタリウムの歴史と技術』 (裳華房、1998)

コメント

_ shigeyuki ― 2009年11月18日 23時21分08秒

一位が明石の天文科学館ですかー。
これまでに何回行っただろう。
小、中学校では、何かにつけて行ったものです。
個人的にも、何度も。
自転車でも行けたので。
プラネタリウムが、世界に三台しかないうちの一台だとか(だったかな?)、聞かされたものでした。
この場所が、東経135度なんですよね。
定番中の定番の校外学習の行き先でした。

_ ガラクマ ― 2009年11月18日 23時46分36秒

 私は、このアンケート結果に興味津々です。
どのようにアンケートをとったかは分りかねますが、たくさんの固有の施設が対象に、それなりに散ばった結果となっております。
 対象が対称なだけに、当然意図しない条件(例えば、アンケートに答えた方の地域、年齢などの偏り)に左右されそうなアンケートと思われますが、結果はあたかも神様が数えたのごとくの数値に見えます。
・・・不思議です。

 話は変わりますが、私の場合、最近の施設ですが近くに住んでいたこともあり、愛媛県総合科学博物館に数年前までよく子供と通いました。
ドームが大きいので、遠くに星が見え、それなりに他とは違ったスケール感がありました。

古いプラネタリウムは、更新しても廃棄せず是非とも残して欲しいものです。

_ 玉青 ― 2009年11月19日 21時00分59秒

○shigeyukiさま

ああ、やっぱりそうでしたか。
今、明石はシゴセンジャーで盛り上がっているようですが、まあブームというのは長くは続かないので、ぜひオーソドックスなプラネタリウムの王道で勝負してほしいと願っています。

○ガラクマさま

Shigeyukiさんのコメントにもありましたが、プラネタリウムは子ども時代の思い出と結び付いている部分があるので、こういうアンケートは老舗館に有利かもしれませんね。人口比からすれば、ベスト5のうち関東から1館しかランクインしてないのは不思議ですが、上のことを考えると、もし五島プラネタリウムが健在だったら、断トツの1位だったかも…という気がしなくもありません。今回の結果は、関東の票が「浮動票」に回った影響もあるやも。(←元関東人である私の偏見も若干入っています・笑)

_ ASTRO11 ― 2009年11月19日 22時46分45秒

はじめまして。
このところプラネタリウムにどっぷりはまったものです。
東京府中の生解説+自動番組というスタイルが好きですね。満天のように自動番組(星空案内まで自動というのはちょっと・・・。)だけだとなんとも味気ない気がします。
あと、川崎の五島光学+メガスターのハイブリッドプラネタリウムもなかなかオツなものです。生解説だけでも時を忘れ楽しむことが出来ました。
いろいろ比べてみると面白いですね。

「HAYABUSA」「はるかなる木星へ」などの全天周モノは浮遊感がたまらなくいいです。

_ 玉青 ― 2009年11月20日 20時11分53秒

ASTRO11さま、はじめまして。

私自身は、あまり普段プラネタリウムに足を運ばないので、最近の傾向にうといのですが、映像がいかに進化しようとも、やはり生解説の味わいは独特という気がします。「星の弁士」とも言うべき、プラネタリアンの至芸を、いずれどっぷりと味わいたいものと思っています。

今後もまたお気軽にコメントいただければ幸いです。<(_ _)>

_ S.U ― 2009年11月21日 21時02分08秒

東京の会合から帰ってきましたので、今日は記念の書き込みです。

明石のプラネタリウムには1度だけ行ったことがあります。私もこの記事を見て驚きました。なぜ、こんなに明石が有名なのか。調べてみると、明石市を日本中央子午線が通っている、ということは、理科ではなく社会科で習うらしいと知り、納得できるような気がしてちょっと複雑な気持ちです。

明石の子午線と言えば、稲垣足穂だと思い出しました。この1位にはタルホの魔力も貢献しているかもしれません。、webであたって、関連するやはり朝日新聞のニュース記事を見つけました↓。
http://www.asahi.com/kansai/travel/ensen/OSK200903070035.html

_ 玉青 ― 2009年11月22日 09時30分39秒

昨日はお疲れさまでした。
(このコメントを読まれている他の方へ補足。私は昨日、日本ハーシェル協会の年会で、S.U氏に何と初めてお目にかかったのでした!)

今、神戸訪問を画策していて、テーマはずばりタルホなので、明石にも足を延ばすかもしれません。

リンク先の記事も興味深く読みました。人間の心の中にしか存在しない「見えない135度線」。その透明な線に、これほどまでに過剰な思い入れを抱いてしまう人間という存在が、また面白いですね。

澁澤龍彦が、かつて『マドンナの真珠』で、南海に横たわる赤道を幻視したのを思い出しました。(南へ向う亡霊船の前に現れたそれは、幅15~6メートル、高さは海面すれすれ、どこまでも続く赤錆びた金属の帯で、太古の昔から波に洗われた結果、表面には水棲動物がびっしりと付着し…という代物でしたが。)

_ S.U ― 2009年11月22日 18時35分33秒

>「見えない135度線」。...過剰な思い入れ
 そうですね。実は昨日気づいたのですが、実は私の出身の地方都市も、最近の市町合併によって135度線が通る市となったのでした。ただそれだけのことで、子午線上に連なる他の市との連帯の気持ちが起こるから不思議です。
 明石に行かれると、そこの空気も特別のように感られるかもしれませんね。

_ 玉青 ― 2009年11月23日 11時04分51秒

おお、「135度線から来た男」!ですね。

「子午線上に連なる他の市との連帯の気持ち」。実に好ましいですね。
出来得れば…地球上のあらゆる人々が、経線にそって北へ北へと旅しながら、行きあう生き物と連帯を深めつつ、最後に北極点で一同に会して大団円というのはどうでしょう。

明石時代のタルホが、級友と「球面上の2直線は必ず交わる」云々といった議論を盛んにしていたエピソードもしのばれます。

_ Ha ― 2009年11月25日 01時35分44秒

はじめまして。ここはずいぶん前からちょくちょく拝見して、楽しませていただいております。私のいるプラネタリウム業界の話題になりましたので、初めてコメントさせていただきます。

名古屋の新プラネタリウムはコニカミノルタが納入を請け負っていますが、実際に設置される光学式プラネタリウムの器械本体はツァイスIX型なのです。
明石もツァイスIX型導入が決まりかけたのですが、すんでのところでダメになり、従来の器械をオーバーホールして延命させることになりました。良かったのか悪かったのか分かりませんけど、こうなった以上、長持ちさせて欲しいですね。
ランキングについては、業界人としては「こういうのって、何だかなぁ・・・」といったイメージです。どういうわけか今年は流行ってるようで、2月の日経プラス1に次いで今回の朝日が2回目です。
http://manyblog2.blog118.fc2.com/blog-entry-44.html

ところで、澁澤龍彦さんの作品に金属製の赤道が出てくるんですね。初めて知りました。今度読んでみたいと思います。
ケストナー(「エーミールと探偵たち」「飛ぶ教室」などが代表作)の「五月三十五日」という作品にも金属製の赤道が出てきて、おじさんだったか、おばさんだったかが、ピカピカに磨いているんです。
きっと北極には金属製の極軸があるんでしょうね。^^

_ 玉青 ― 2009年11月25日 20時40分19秒

Haさま、初めまして。

名古屋の後継機がやはりツァイスだと聞いて、「横綱」の健在を喜んでいます。
それにしても、プラネタリウム業界の“業態”もなかなか複雑なのですね。
日経の記事によると、その筋の人が選んだプラネタリウム第1位が名古屋だとか。
名古屋、侮りがたし。ここでも評価のポイントは「生解説」だそうですから、プラネタリアンの責務は重大ですね。

実はこの間、最近のプラネタリウム事情を知ろうと思い立ち、せっかくだから話題のプログラムを見ようということで、「銀河鉄道の夜」を観覧してきました。最近のプラネタリウムはこんな塩梅か!と本当にびっくりしました。番組自体は素直に感動しましたが、ただ、私が見た館は最初から最後まで生解説はなく、すべて機械任せだったので、うーん…としばし考え込みました。この点は、もう少し見て回ってから、また考えたいと思います。

  +

金属製の赤道をケストナーも書いていたということは……実は赤道は本当に金属でできていて、赤道付近の人にとっては自明のことだとか。そして北極地方の人は、金属製の極軸など、何を今さらと思っているのかも…(笑)

_ 清水 ― 2012年11月10日 13時12分05秒

玉青さま、すっかりご無沙汰しております。

 やっぱりツァイスのプラネタリウムは郷愁をそそりますね。最新のデジタル映像とかになれてしまうと、かえって重厚素朴なメカニカルさが魅力に思えたりもします。

 ところで私は上映が始まる前の白い丸天井がたまらなく好きなんですよね。

 ただいくつもの筋が放射状に走っているだけの、あの「何もない空間」を見ているだけで、そこに吸い込まれるような浮遊感というか、ふわふわとしたリラクゼーションの世界に浸ってしまうんです。
 あの丸天井を見上げながらブランデーを片手に時を過ごしてみたいなあと思うのは私だけなのでしょうか。

 だいぶ前の話ですが、新婚旅行でローマに立ち寄ったとき、現存する完璧な古代ローマ建築といわれるパンテオンに行ってみたのですが、その巨大な丸天井を見上げていて言葉に表現できない悠久の時を感じました。 丸天井には何か不思議な魅力があるんですよねえ・・・。

_ 玉青 ― 2012年11月10日 19時55分25秒

お久しぶりです。
ちょっと懐かしい記事へのコメント、どうもありがとうございます。
白い丸天上に寄せる思いは、私にもよく分かる気がします。
ちょうどまっ白なスクリーンのように、そこには何でも思いのままに投影できるのも素敵ですし、私の場合、ドーム状の白屋根を見上げていると、なんだか自分が卵の中にいて、不思議なまどろみの中にいるような気がします。
外の世界と内なる世界の中間をさまよっているといいますか、前世とか、来世といったこともボンヤリと思われて、いろいろ言葉にならぬ想いが自然とこみ上げてきます。

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック