A. ギユマン 『彗星』 (3)2007年06月03日 21時02分56秒

昨日の彗星とは対照的に、九尾の狐状に複数の尾を曳いた彗星。
キャプションには、「シェゾー彗星。1744年3月8日夜、ローザンヌからの眺め」とあります。

本書の出版から、さらに130年ほど遡った18世紀前半の情景。何とも神秘的というか、むしろ不気味な感じが漂います。昔の人が彗星に恐れおののいたのも肯けます。

この前も挙げた、ウィキペディアの「大彗星」の項(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E5%BD%97%E6%98%9F)には、これと同じ絵がモノクロ図版で掲げられていますが、名前がなぜか「クリンケンベルグ彗星」となっています。

で、調べてみると、クリンケンベルグが第一発見者で、ド・シェゾーは直後に軌道計算をした人のようです。ウィキの出典は、1884年にドイツで出た本なので、彗星の呼び名にも、それぞれお国自慢の要素が出ているのでしょう。

この絵には元絵があるはずですが、今すぐには調べがつきません。ただし、このように鮮麗なカラー図版にしたのは、たぶん本書の手柄だと思います。

コメント

_ Bay Flam ― 2007年06月05日 19時09分15秒

ギユマンの書物が1875年刊。で、Wikipedia@de の挿図の出典となる Valentiner の書物が1884年刊ですから、後者が前者のコピーですね。まさに劣化コピー、6番目(一番右側)の尾が見えなくなってしまっています。5番目の尾の上にある明るい星は〈わし座〉のアルタイルです。玉青さんの画像では判りづらいのですが、Wikipedia の方を見ると、3番目と4番目の尾の上に〈いるか座〉が見えています。
で、この画の元絵ですが、おそらくド・シェゾー自身のスケッチかと思われます。ド・シェゾーのスケッチは草下英明 『星座と伝説』(保育社・カラーブックス,1977)に見えます。 こちらには〈こうま座〉や〈ペガスス座〉のエプシロン星エニフ、地平線下の彗星のコマなども描かれています。

『星座と伝説』には、1811年の Flaugergues (フロジェルグ?)彗星のほか、1843年の Daylight Comet や1858年のドナティ彗星の別イラストも掲載されています。構図は同じで地上の風景だけが違います。ウィキペディアのドナティ彗星の出典はヴァイスの 『星界の絵地図』 のようですね。2本の細い尾はイオン・テイルでしょうか? また、コマのすぐ右脇にある明るい星はアルクトゥルスのようです。ヴァイスの画には北斗七星のガンマ星より後ろの5星が、『星座と伝説』 の画には〈かんむり座〉が見えまていす。かなり写実的に描かれていますね。

で、このクリンケンベルク彗星の画なんですけど、多分に誇張されているんだろうなとテキトーに考えていたのですが、マックノート彗星の写真を見て認識が一変しました。「これは誇張でなんでもない現実なんだ」と。

クリンケンベルク彗星は、雑誌『星ナビ』の4月号に別イラストが掲載されているのですが、『星座と伝説』同様、例によって出典が明示されていないので出処がわかりません。

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