天文と気象(5)…世界文化社版・『天文と気象』 ― 2010年03月23日 18時48分14秒
■天文と気象(カラー図鑑百科6)
宮地政司・畠山久尚(担当編集員)、世界文化社、昭和43年発行
この図鑑は、あまり本屋の店頭で見た記憶がありません。
何となく児童図書館にありがちなムードを感じます。
あるいは、セット販売のみだったかもしれません。
内容は、既存の本の切り張りの域を出ず、あまり面白くありません。
そもそもこのシリーズは編集委員制度をとっていて、前国立科学博物館館長の岡田要氏や、前東京学芸大学学長の高坂正顕氏などが名を連ねています。そして、この巻の担当編集委員というのが別にいて、それが上のお二人ですが、宮地氏は前東京天文台長、畠山氏は前気象庁長官。
うーむ、何だかやたらに前職の人が多い。これこそ明らかに名義貸しでできた産物に違いない…と私は睨んでいます。
ただ、この表紙を見ると、何か心の中で動くものがあります。
これぞ昭和40年代というか、昭和30年代でも、50年代でもなく、40年代そのものという風に、当時を記憶する者としては感じます。
この図鑑が出た昭和43年(1968)は、ちょうどウルトラセブンがオンエアされた年ですが、それと同じ手触りというか、「3丁目の夕日」的な板塀の世界が駆逐された後の、コンクリートの灰色建築が威張っていた頃を思い出します。
まあ、ここで昭和を論じてもしょうがないので、ついでに望遠鏡に注目してみます。
この表紙で目を引くのは、やはり望遠鏡の存在。
東京天文台の電波望遠鏡をバックに、少年少女が三脚に乗った望遠鏡を覗いています。メーカーや機種はちょっと分かりません(ヴィンテージ望遠鏡好きの人ならば分かるかも)。時代を考えると、アルミ三脚はちょっと珍しい。
1968年当時に、こんなものを小学生が持っていたら、相当自慢できたでしょうが、こういう取り合わせを奇異と思わない程度には、望遠鏡が子供たちに普及しつつあったのも確かで、この後望遠鏡は急速に「消費されるもの」となっていきます。そして、学習用顕微鏡と並んで、学習用望遠鏡というのが売れ、あまり使われることもなく子ども部屋の隅で埃をかぶっている…という状況が、あちこちで見られるようになります。
ただ、一面、そういう広い裾野があったからこそ、情報も機材も豊かに行きわたり、マニアックな天文少年が続々と生れる土壌が作られたのでしょう。
おそらく、現在の天文趣味人の中核は、当時の天文少年のカムバック組と想像しますが、これはいわば当時の遺産を食い潰しているようなもので、そういう人たちが一線から消えた後の天文界はいったいどうなるのか…想像すると、ちょっと心が寒くなります。まあ、元々マイナーな趣味なので、旧に復するだけのことなのかもしれませんが。。。
宮地政司・畠山久尚(担当編集員)、世界文化社、昭和43年発行
この図鑑は、あまり本屋の店頭で見た記憶がありません。
何となく児童図書館にありがちなムードを感じます。
あるいは、セット販売のみだったかもしれません。
内容は、既存の本の切り張りの域を出ず、あまり面白くありません。
そもそもこのシリーズは編集委員制度をとっていて、前国立科学博物館館長の岡田要氏や、前東京学芸大学学長の高坂正顕氏などが名を連ねています。そして、この巻の担当編集委員というのが別にいて、それが上のお二人ですが、宮地氏は前東京天文台長、畠山氏は前気象庁長官。
うーむ、何だかやたらに前職の人が多い。これこそ明らかに名義貸しでできた産物に違いない…と私は睨んでいます。
ただ、この表紙を見ると、何か心の中で動くものがあります。
これぞ昭和40年代というか、昭和30年代でも、50年代でもなく、40年代そのものという風に、当時を記憶する者としては感じます。
この図鑑が出た昭和43年(1968)は、ちょうどウルトラセブンがオンエアされた年ですが、それと同じ手触りというか、「3丁目の夕日」的な板塀の世界が駆逐された後の、コンクリートの灰色建築が威張っていた頃を思い出します。
まあ、ここで昭和を論じてもしょうがないので、ついでに望遠鏡に注目してみます。
この表紙で目を引くのは、やはり望遠鏡の存在。
東京天文台の電波望遠鏡をバックに、少年少女が三脚に乗った望遠鏡を覗いています。メーカーや機種はちょっと分かりません(ヴィンテージ望遠鏡好きの人ならば分かるかも)。時代を考えると、アルミ三脚はちょっと珍しい。
1968年当時に、こんなものを小学生が持っていたら、相当自慢できたでしょうが、こういう取り合わせを奇異と思わない程度には、望遠鏡が子供たちに普及しつつあったのも確かで、この後望遠鏡は急速に「消費されるもの」となっていきます。そして、学習用顕微鏡と並んで、学習用望遠鏡というのが売れ、あまり使われることもなく子ども部屋の隅で埃をかぶっている…という状況が、あちこちで見られるようになります。
ただ、一面、そういう広い裾野があったからこそ、情報も機材も豊かに行きわたり、マニアックな天文少年が続々と生れる土壌が作られたのでしょう。
おそらく、現在の天文趣味人の中核は、当時の天文少年のカムバック組と想像しますが、これはいわば当時の遺産を食い潰しているようなもので、そういう人たちが一線から消えた後の天文界はいったいどうなるのか…想像すると、ちょっと心が寒くなります。まあ、元々マイナーな趣味なので、旧に復するだけのことなのかもしれませんが。。。
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