京都博物行(2)…パイプウニの骨格(前編)2015年07月12日 10時47分03秒

ウサギノネドコさんから持ち帰った黒い箱。


その中身は真っ白なパイプウニの骨格標本でした。


クッション用の包み紙も黒で、白と黒のコントラストが鮮やか。
本来はカラフルな体色のウニですが、きれいに漂白された骨格は、自然の造形の不思議さを存分に見せてくれます。


右側は、以前別のところで見つけた、パイプウニの棘。
ウニの死亡後、その棘はすみやかに本体から外れて、バラバラになってしまうのですが、「棘」と言いながら、パイプウニのそれは全くトゲトゲしていなくて、尖端の丸い棍棒状をしています。

パイプウニの英名は slate pencil urchin (石筆うに)と言うそうですが、これは石筆を知っている者にとっては、実にうまいネーミングで、そのずんぐりした棘の感じがよく出ています(細身のチョークみたいなものです)。

和名の「パイプ」も、その特徴的な棘の形に由来するのでしょう。
でも、あまりパイプらしくは見えないなあ…と思って、荒俣宏さんの『世界大博物図鑑』(別巻2 水棲無脊椎動物)を開いたら、かつてはウニの棘の一端に巻きタバコを入れる穴を開けて売っていた…という、大正時代の動物学者の文章が引かれていました。パイプというよりも、シガレットの「吸い口」として用いられたようです。

(同書はさらに続けて、この動物学者(谷津直秀、1877-1947)の子供時代には、小笠原産のパイプウニの棘が、本当に石筆の代用品として売られていたというエピソードも紹介しています。英語の「石筆うに」も、あるいはそれが由来かもしれません。)

(『世界大博物図鑑』のパイプウニは、キュヴィエ『動物界』(1836-49)からの転載)


(以下、後編につづく)

コメント

_ S.U ― 2015年07月12日 16時25分33秒

この石筆みたいなやつ、よく見るような気がします。

 ところで、素朴な疑問です。
ウニの骨格のポツポツ模様は規則正しく並んでいるように見えますが、ウニの棘はランダムについているように見えます。両者の配置は対応しているのでしょうか。

_ 玉青 ― 2015年07月13日 06時17分05秒

パイプウニの棘は、海の土産物屋で風鈴に加工したりして売っているので、見る機会は多いと思います。

ときに棘の件ですが、ポツポツ模様は棘の基節なので、両者はぴたり対応しているはずです。(でも、ウニは棘を1本1本自在に動かせるので、その向いている方向が往々にしてばらばらで、そのせいで配置もランダムに見えるのかもしれません。)

_ S.U ― 2015年07月13日 20時15分45秒

>両者はぴたり対応しているはずです。(でも、ウニは棘を1本1本自在に動かせる

 おぉ、これは意外な真実。ウニの棘は元来規則正しいのに、わざとバラバラにしているのですか!
 
 毛並み正しくおツムジもきれいな頭髪の人が、わざとボサボサ頭にしているようなものですか。ウニは本当に人に似ていますね!

 ウニを床屋につれていって、五分刈りにしてやるか、せめて櫛を入れて、分け目ハッキリの横分けにすれば、ウニの男ぶり(♀なら女ぶり)がぐっと上がると思うのに惜しいものです。

_ 玉青 ― 2015年07月13日 21時55分27秒

かつて、これほどまでにウニの毛並みを心配してくれた人があったでしょうか。
ウニたちは決してS.Uさんに足を向けて寝ることはできなかろうと思います。

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