足穂世界の極北 『一千一秒物語』 ― 2007年12月09日 11時14分00秒
一昨日、近所の本屋に行ったら、遠くから私の視線を鋭く捉えた本がありました。
稲垣足穂著『一千一秒物語』。頭に「覆刻」と書いてあります。
「?」と思いつつ手に取ったら、カバーから本体まで、これぞまさしく大正12年(1923)に金星堂から出た、初版の完全なる復刻版でした。
「私の其後の作品は、みんな最初の『一千一秒物語』の註である」という、足穂の有名なセリフがあります。広大な足穂世界にあって、この『一千一秒物語』はちょっと別格という感じがします。(ちなみに、上の足穂のセリフは、“『一千一秒物語』の倫理”という文章に出てくるのですが、この復刻版には、その全文を刷った紙が栞代わりにはさまっていました。実に心憎い配慮です。)
大いに食指が動きましたが、問題は5千円という値段です。『一千一秒物語』自体は文庫もあるし、作品集にも収められているので、更にもう1冊買い足すかどうか。最近出費がかさんでいるしなぁ…と珍しく理性を働かせ、いったんは本を棚に戻し、店を出ました。
しかし、家に帰ってからも気になって、ちょっと調べてみました。
この金星堂版は、昭和38年(1963)にも復刻が出たらしいのですが、古書検索サイトに当たっても、原著はもちろん、復刻版の方も見当たりません。仮に売りに出ても、原著なら10万円以上はするでしょう。とすると、足穂のオリジナルの世界に近づこうと思ったら、この機会を逃す手はない。しかも、今回の復刻も300部限定なので、そういつまでも市場にあるとは思えない。
これはやはり買うしかない―という結論に達し、意を決して購入しました。我ながら英断。
★覆刻 『一千一秒物語』
平成19年11月発行、沖積社
ISBN 978-4-8060-2148-3
外箱デザイン・秋山由紀夫、外箱挿画・梅木英治
足穂世界の極北 『一千一秒物語』(2) ― 2007年12月09日 11時18分51秒
中身はこんな感じです。古い字体が何ともいいですね。
なお、挿画を担当された銅版画家、梅木英治さんの日記にも本の画像や情報が載っていました。
■Diary http://www.sakai.zaq.ne.jp/ikemu/page/diary01.html
(12月2日、10月20日の記事を参照)
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