驚異の種子のキャビネット(後編)2014年11月25日 06時20分25秒

今日は雨。夜明け前の暗い景色の中に、雨の音だけが聞こえます。

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小箱を窓際に持ち出して撮影。


ちょっと角度を変えたところ。みなガラス蓋付きです。
この紙箱も、それを収める木箱も、おそらく全て井口先生の手作り。器用な先生だったのでしょうが、それにしても、たいへん手間と時間がかかったことでしょう。


蓋を開けたところ。各箱は原則として4列6段、計24種の種子が貼付されています。

をなもみ、すみれ、ぐらぢおらす、げんのしょうこ、にんじん、ぶどう、かへで…
花壇に咲く花、野に生える草、畑の野菜、森に茂る木、おいしい果物…

その種類や性質は多様で、分類学的配列には決してなっていません。これは井口先生の几帳面さを考えると不思議なことですが、おそらく、生徒といっしょに種集めをし、集めた順に貼り込んでいったからではないでしょうか。


さらに別の箱。86年の歳月は決して短いものではありません。台紙から剥がれてしまったもの、バラバラになってしまったもの、虫に食われてしまったものも少なくありません。




それでも、この標本を見ていると、みんなで喜び勇んで種集めをしたことや、先生が夜なべをして標本箱を手作りしたこと、それを取り囲んで、みんなで目を輝かせ、先生の話に聞き入ったこと―そんな見たはずのない86年前の情景が、鮮やかによみがえる気がします。