カテゴリー縦覧…星図編:古星図を眺める(1) ― 2015年02月15日 09時54分21秒
数年前、ドイツの業者から18世紀の星図を買いました。
格別何か特徴がある品、というわけでもないんですが、「数万円以下で流通している古星図って、たとえばどんなんだろう?」と考えたときに、参考になる品だと思うので、載せておきます。
格別何か特徴がある品、というわけでもないんですが、「数万円以下で流通している古星図って、たとえばどんなんだろう?」と考えたときに、参考になる品だと思うので、載せておきます。
買ったのはバイエルンの古地図・古版画の専門業者で、丁寧にマット装した状態で送ってくれました。昔から実店舗も構えており、一通りの見識を備えた店と見受けました。
マットの下の本体がこれです。
シートサイズは34.2×24.5cm、印面サイズは27×20cm。
シートサイズは34.2×24.5cm、印面サイズは27×20cm。
タイトルは「Le Globe Celeste en deux plans Hemispheres(2つの半球図によって表現された天球)」。購入時の説明文には、「作者不明。美しいオリジナル手彩色を施したフランス製銅版画。1750年頃」とありましたが、今やドイツの専門業者が分からないことも、東海の小島の磯で素人がカシャカシャやれば分かる時代です。
で、たちどころに分かったのは、この星図が『Atlas Nouveau Portatif』(1756)という、パリで出版された地図集から切り取った一葉であり、作者は18世紀の地図メーカー、ジョルジュ・ルイ・ル・ルージュ(Georges Louis Le Rouge) だということ。
いったんそうと分かれば、あとは古星図の参考書、Warnerの『The Sky Explored』に当たればよく、ル・ルージュのこの星図には、さらに元図があって、フィリップ・ド・ラ・イール(Philippe De La Hire、1640-1718)が1705年に出版した星図がそれであること、ド・ラ・イールは、さらに17世紀初頭のヨハン・バイエルの星図を参考にしたことを、Warner は教えてくれます。
(なお、Warnerの本では、ル・ルージュは生年未詳、1778年没となっていましたが、フランス国立図書館のデータベースに当たったら、1712年にハノーヴァーで生まれ、1790年代没とありました。おそらく後者が正しいと思います。)
なんだかゴチャゴチャしているので、下に再整理。
■標題: Le Globe Celeste en deux plans Hemispheres.
作者: Georges Louis Le Rouge (1712-179?)
出所: Atlas Nouveau Portatif, 1756 (Paris)
作者: Georges Louis Le Rouge (1712-179?)
出所: Atlas Nouveau Portatif, 1756 (Paris)
なお、表面はきれいですが、舞台裏はこんな↓感じで、
本からベリベリ引き剥がしたことが一目瞭然。引き剥がしたのが件の業者であれば、星図の出所も分かったはずですから、たぶんもっと昔の人の仕業にちがいありませんが、貴重な古星図でも、ときに手荒い扱いを受けていることに胸が痛みます(それに間接的に手を貸しているのが、他ならぬ私ですから、なおさらです)。
(星図の細部は次回に。この項つづく)
コメント
_ Ha ― 2015年02月20日 03時20分38秒
_ 玉青 ― 2015年02月20日 06時33分58秒
あはは、まあ参考書というのは、機会がなければ見ないものですよね。
でも、機会があれば、大いに役立つのがありがたいところです。
でも、機会があれば、大いに役立つのがありがたいところです。
コメントをどうぞ
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持ってはいても、これまで、ろくに見てませんでした。(図が白黒なので…。^^;)
それにしても見事な調査、勉強になりました。^^