ファーブル昆虫館(虫の詩人の館)(1)2007年07月07日 11時13分57秒


千葉からとって返し、東京へ。前から行きたかった「ファーブル昆虫館」にも足を伸ばしました。

文京区千駄木の落ち着いた住宅地に昨年オープンしたかわいいミュージアム。仏文学者にして稀代の昆虫マニアである奥本大三郎さんが、自宅敷地を提供して開設されました。

昔から 『昆虫記』 の世界をより深く知りたいと考え続けてきた奥本氏は、

「大人になってからは現地の研究者と標本の交換をしたりして、キンイロオサムシとかオオクジャクヤママユとか、『昆虫記』の主役たちを蒐め始めた。同時に本などの資料、民具なども手に入れた。やがて家の中は、それらのもので足の踏み場もない状態になってしまった。」

そこで、

「毎日貴重な資料を跨いで生活していないで、これを綺麗に並べ、説明をつけていろいろな人に観てもらったらどうだろうと考えるようになったけれど、建物を建てるにはお金が要る。ところがそのお金を「出してあげる」と、こんな時代に奇蹟のようなことをいってくれる人達がおられ、とうとう「ファーブル昆虫館」が建つことになった。」

…と、簡単にいえば、こういう経緯だそうです(上の文章は、昆虫館のリーフレットから転載)。

私が行った日は、金魚すくいか何かのイベントをやっていて、近所の親子連れでにぎわっていました。高踏的に趣味の世界に沈潜するのではなく、一般への広報普及を目指しているだけあって、とても気さくな、フレンドリーな雰囲気の施設です。

1階には昆虫標本やファーブル関係資料が展示され、地下1階にはフランスのサン=レオン村に建つファーブルの生家内部が復元されています。
(個人的な感想…地下1階は民俗資料館的な面白みはありますが、昆虫テイストはかなり希薄です。できれば、ファーブルが晩年を送り、『昆虫記』を執筆した「アルマスの家」が再現されていたら、なお良かったかも。スペースの関係や、予算の問題等から、それは難しかったのかもしれません。)

■ファーブル昆虫館HP http://www.fabre.jp


※ところで、写真の左手に茂る3本の木。これは奥本氏が「空想の庭園」というエッセイ(集英社文庫・『虫の宇宙誌』所収)で書いていたクヌギの木ではないかと思います。わざわざ氏の故郷・大阪から運んだ団栗を蒔いて育てた木。エッセイは、そこから都市における緑の話、南方熊楠による鎮守の森保護運動、日本人の自然観の変化、そして台湾先住民に対する思慕へと話が広がっていきます。氏の滋味豊かな文章を思い起こしつつ、木と対面してきました。